- 議論の整理
生涯スポーツとして高齢者にも親しまれている卓球は、超高齢化が進む日本において楽しみながら健康を維持する手段の一つとして重要な役割を担うだろう。このような状況の中で、科学的に正しい理論に基づいた指導を行う為にも卓球の動作解析研究を発展させていく必要がある。近年の研究から、打球のスピードはラケットの向きや進路よりもラケット速度による影響を受けやすいことが報告されているが、ラケット速度を規定するスイング動作において特に必要とされる肩と腰の関節を対象とした研究は未だその数が限られている。この分野において葛西教授らは一流選手のストローク中の関節周りのトルク発揮の様相を調べ報告している。
- 問題発見
この報告では、両肩と両腰の2直線が水平面で作る角度、いわゆる「腰の捻り角度」が選手の腰の使い方を評価する指標として用いられ、単位時間あたりの角度変化量が大きいほど打球スピードが大きくなるという結果が示されている。では不安定な姿勢でのスイングが求められる試合という状況において、常に大きな捻り角度の変化を発揮する為には具体的にどのような要素が必要なのだろうか。
- 論証
スイングは骨盤の回転から始まり手部に至るまで順次行われる運動連鎖の技術により速度が加算されるものである為、その速度伝達がスムーズに行われるかどうかが大きなポイントとなると考えられる。私はセンサ計測法を用いて、不安定な体勢からなされるスイング動作において、稼働する腰から手部に至るまでの各関節の位置計測を行い、これとスイング速度の間に相関関係が見られるかどうかを調べたい。
- 結論
この手法は葛西教授らの研究をさらに発展させたものだと言え、複雑な力伝達が行われるスイング動作を評価する為のより高度な指標を確立する一助となることであろう。この知見を自らの競技スキルの上達に活用するとともに、あらゆる世代に通用する指導理論の構築に役立てたいと考えている。
- 結論の吟味
上記の研究を行うにあたって、この分野において先駆的な研究者であり、日本のトッププレーヤーの動作を熟知している葛西教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
葛西純一「卓球との関わり:指導と普及と研究」『コーチング学研究』30(3), 25-28
コメントを残す