- 議論の整理
情報通信システムの進歩により、コミュニケーションの形式も変化してきた。SNSの普及によって若者を中心としてあらゆる世代がテキストベースのコミュニケーションを行うようになった。このような言語情報主体のコミュニケーションでは感情伝達機能の不足を補う為に顔文字や絵文字等の非言語情報を利用する場合が多いが、これらが対人感情に及ぼす影響については未だ研究が十分でない。木村と山本は、返報性の規範という点からこれらの交換過程が対人感情に及ぼす影響について検討している。
- 問題発見
そもそもテキストベースによるコミュニケーションはどのような特徴を持っているのだろうか。日本の大学生を対象としたダグラス教授らの研究によれば、喜びや罪悪感を伝える場面では感情の伝達パターンが一つであった一方で、悲しみや怒りを伝達する場合には2種類以上のパターンが見られたことが報告されている。この結果に基づくと、悲しみや怒りは複雑な伝達を必要とするために非言語情報を利用する可能性が高いことが考えられる。しかしながら、この点については分析がなされていないという課題がある。
- 論証
実際のところ、喜びなどの伝達の際にも顔文字や絵文字などの非言語情報が積極的に用いられているように感じる。このことは、顔文字や絵文字の機能が単に感情伝達機能の不足を補うことだけではないことを示唆しているのではないだろうか。そこで、本研究では特定の場面においてこれらの非言語情報が、伝達したい感情の複雑化あるいは強化のどちらに働くのかという点について検討を行いたいと考えている。
- 結論
SNS等によるコミュニケーションの齟齬がストレスを引き起こす原因となる可能性がある。本研究から得られた知見はテキストメッセージにおける円滑なコミュニケーションを促進するものと期待している。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、これまでコミュニケーション学において数多くの優れた論文を執筆してきたスコット・ダグラス教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
- 木村昌紀、山本恭子 (2017) 「メール・コミュニケーションにおける顔文字や表情絵文字の交換過程が対人感情に及ぼす影響」『感情心理学研究』 24(2), 51-60
- Kato, Y., Scott, D.J., Kato, S., and Sato, K. (2010). Patterns of Emotional Transmission in Japanese Young People’s Text-Based Communication in Four Basic Emotional Situations. International Journal on E-Learning. 9(2), 203-227
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