早稲田大学 人間科学部 AO入試 志望理由書 提出例(辻内琢也研究室向け)

  • 議論の整理

医療人類学は人文科学領域と自然科学領域の狭間にある複合領域である。自然科学の枠に縛られないこの学問領域は近代医学の抱える課題を克服するための可能性を秘めている。例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などはヨガや呼吸法などのリラクゼーションによって症状が緩和することが知られているが、そのメカニズムについては未だ解明されていない部分が多い。このように、いわゆる代替医療行為とされているような施術にも一定の効果が見られる場合があり、医療人類学の観点からこれを取り上げ、検討することには意義がある。

  • 問題発見

当該研究領域が効果を発揮するのは、特に現代の自然科学的アプローチでは詳細に知ることの難しい心理的疾患に関してである。辻内教授は東日本大震災によって引き起こされた原発事故を経験した被災者を対象に、1年後のPTSDの症状を調査し、これを引き起こす要因を抽出している。その結果、原発事故による避難や転居に関わる要因がPTSDに強く関わる可能性を示した。このことは、PTSD治療の為には社会的・経済的問題の解決も必要であるという視点を与えるものである。それでは、PTSD治療として現在最も有効であるとされている精神療法について、社会的要因の解決といった視点を取り入れることができるだろうか。

  • 論証

精神療法の一つに、曝露療法というものがある。これは、精神療法家が患者に対して過去のトラウマと対峙するように誘導することによって行われる治療法である。療法家の援助のもと、トラウマを異なった視点から観察することによってその克服が期待できるが、私はこの治療法に社会的要因の解決という視点が含まれているであろうことを指摘したい。そこで、曝露療法による効果の有無とその患者が抱えていた社会的要因との間に相関関係があったかどうかを検討したいと考えている。

  • 結論

研究領域の細分化・専門化が進んでいる現状こそ、医療人類学のような2つの領域にまたがる複合研究分野の価値が高まっているといえる。当該研究分野が近代医学の限界を超え、大きなブレイクスルーをもたらす知見を与えることを期待している。

  • 結論の吟味

上記研究を行うにあたって、医療人類学分野において代替医療行為の学術的検討を行い、近年では東日本大震災に関わる心理疾患について数多くの研究を行ってきた辻内教授のもとで学ぶことを強く希望する。

参考文献

T. Tsujiuchi. (2016). High prevalence of post-traumatic stress symptoms in relation to social factors in affected population one year after the Fukushima nuclear disaster. Plos One 11(3)

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