- 議論の整理
外科手術技術の発展に伴い、難度の高い腹腔鏡下手術をより高い精度かつ安定して行うことのできるダヴィンチのようなロボットアーム支援型の手術様式が行われるようになりつつある。日本においても前立腺がんや腎がんなどの切除術に導入されており、今後も発展していくことが期待される。一方で、この手術様式が定着していくにはコスト面や利用者の心理面などの様々な課題を克服していく必要があることも事実であり、臨床医学の幅広い知見からの議論が待たれている。
- 問題発見
特にコスト面に関しては、装置の維持費やこの技術の特殊性から高コストの術式になることが分かっており、この装置の導入に対する費用対効果が問題となる場合がある。当該テーマに対し、梶原教授らは日本に未だに導入されていない胸部ロボット支援技術に関して、診療報酬に基づく費用対効果を従来の腹腔鏡下手術と比較検討した。その結果、年間300件以上の手術件数が必要とされることが分かっている。それでは、このようなロボット支援型手術を普及させるために、実際の医療現場で求められるものは何だろうか。
- 論証
上述したように、コスト面における問題を解決する為には、この技術を用いた手術件数を増加させることが有効であることが分かっている。従って、まずはロボット手術に従事可能な医師の教育に注力すべきであると考えられる。我が国には腹腔鏡技術認定医制度が存在するが、ロボット手術に関してもこのような認定医制度を設ける必要があるだろう。本研究では、臨床医学の知見に基づいてこの制度の内容について検討を行いたいと考えている。
- 結論
ロボット支援手術によって医師の負担が大きく軽減されることが人間工学の観点から示されている。これからの医療現場の在り方を大きく可能性を秘めた当該技術の普及は、医療の質を向上させるものであり、本研究もその一助になると期待している。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、臨床医学分野において、幅広い観点から現場に根差した医学研究を行ってきた河手教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
Kajiwara, P. B. James, Y. Kato, M. Kakihana, T. Ohira, N. Kawate, N. Ikeda. (2015). Cost-Benefit Performance of Robotic Surgery Compared with Video-Assisted Thoracoscopic Surgery under the Japanese National Health Insurance System. Annals of thoracic and cardiovascular surgery. 21(2)
コメントを残す