- 議論の整理
厚生労働省は健康寿命の延伸を日本の重要課題と位置づけ、2040年までに健康寿命を3年以上延伸することを目標に掲げた。この目標達成の為には人々の健康に対する意識をより高めていく必要があるが、健康への意識づけを広く行う上でメディアが果たす役割は大きい。公衆衛生学は集団レベルでの健康を対象に、これに影響を及ぼす様々な因子を分析することで社会全体の健康の維持に貢献してきた学問分野であるが、健康とメディアとの関係についての実証的研究例は未だに不十分であるといえる。
- 問題発見
当該領域において、扇原教授はメディアの報道の在り方が人々の健康に及ぼす影響を調査してきた。ここでいう健康とは精神的な健康も含まれており、自殺に関する報道が自殺率を上昇させるというウェルテル効果として知られた現象に注目し、メディアによる自殺報道の特徴を抽出した研究なども行っている。メディア、特にテレビや新聞などのマスメディアは様々な制約から事実を取捨選択して報道しているが、その受け取り手の多くはメディアから伝えられた要素のみによって影響を受ける為、何をどう伝えるかを慎重に吟味しなければならない。現状ではメディアは、健康に関する情報を伝える際にどのような報道姿勢を取っているのだろうか。
- 論証
扇原教授のグループは、メディア報道が子宮頸がんウイルスの予防接種率に及ぼす影響に関して、このワクチンに対する新聞報道の特徴を調査している。調査結果によれば、このワクチンの効果や有効性を副作用とともにバランスよく報道している記事は非常に少なく、読者が多角的な視点から予防接種を受けるかどうかを判断する為の材料を提供できていないことが示唆された。この研究では新聞報道のみを分析していたが、私はさらにインターネットやテレビによる報道の場合ではどうかを分析したいと考えている。
- 結論
新型コロナウイルスの流行によって、健康を脅かす脅威に関するテレビや新聞などの報道が社会に与える影響を多くの人々が改めて実感しているはずである。このような状況において、本研究の意義はますます意義深いものだと考えている。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、公衆衛生分野において広範な視点から様々な研究に取り組んできた扇原教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
Ueda, R. Yokouchi, T. Onoda, A. Ogihara. (2017). Characteristics of Articles About Human Papillomavirus Vaccination in Japanese Newspapers: Time-Series Analysis Study. JMIR Public Health Surveill. 3(4) :e97
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