- 議論の整理
地域社会の活性化を目指す上で、住民たちにとって快適な環境づくりを行うことは肝要である。ではその快適さとは何によってもたらされるものだろうか。私は地域住民間のコミュニケーション、特に、少子高齢化の傾向が強い地域社会にあっては世代間の交流を活発にすることがQOL向上に深く繋がると考えている。団体という観点からは、総合型スポーツクラブなどのレジャー組織が設立され、地域の活性化に貢献している。
- 問題発見
しかし一方で、住民が集まる物理的な場所、つまり建築という観点から世代間の交流を促すデザインについて論じられた例はいまだ少ないのではないだろうか。ここで注目したいのはオルデンバーグの提唱するサードプレイスという概念であり、家でも職場でもないこの空間は人々が純粋に交流を求めて集まる場である。サードプレイス利用者の意識を調査し、デザインに取り入れることは交流を促進することに他ならない。それでは地域社会におけるサードプレイスとは、具体的にどのようなものが挙げられるだろうか。
- 論証
サードプレイスが備えるべき特徴のうち、利用コストの低さという点に着目すれば公民館のような公共施設が候補として挙がってくるのではないだろうか。だが、現状では公民館はあらゆる世代に対して開けた場であるとは言い難い。従って、マーケティング分野における顧客経験価値マネジメントの概念を応用することで、幅広い利用者層の達成を可能にするような公民館デザインの特徴を抽出したい。
- 結論
小島教授らは経験価値マネジメントを建築環境心理学研究に応用し、劇場施設や公共図書館に対する顧客心理を可視化してきた。本研究もこれらの先行研究の延長線上に存在するものであり、当該研究分野の新たな地平を切り開くものだと考えられる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、建築環境学分野において顧客心理を可視化する評価系の構築などの数多くのユニークな研究を行ってきた小島教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
小島隆矢ほか (2009). 「住居・地域の安全・安心についての意識と対策行動に関する統計的因果分析」『日本建築学会総合論文誌』7, 104-109
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