■議論の整理
2020年から小学校3年生からの英語教育が開始される。3、4年生の間は歌などを使った体験授業を年間35コマ、5年生からは年間70コマになって成績がつくようになる。さらに、中学校の授業は2021年度からオールイングリッシュになり、コミュニケーションが重視されるという。社会全体でも英語教育の重要性が言われるようになったためか、幼少期から英語の学習を子どもに受けさせる家庭も増加している。保育園・幼稚園だけを経営しているインターナショナルスクールをプリスクールと呼ぶが、少子化にも関わらず年間20〜30校規模で増え続けているという*。
■問題発見
母語が確立されていない幼少期からの多言語教育は、バイリンガルではなくセミリンガルを育てることにつながってしまう可能性がある。セミリンガルとは、二か国語を話すことはできるが、双方の言語が年齢相応のレベルに達していないことを指す。
■論証
ジム・カミンズ,中島和子著『言語マイノリティを支える教育』によると、日本語の読み書きが不十分なうちにカナダに移住した子どもは現地語の読み書きがなかなか身につかなかった。一方、日本語の読み書きに不自由がなくなってから移住した場合は現地で育った子どもたちと同等の読み書き能力が早く身についたという。母語を読み書きする能力は、母語で深く思考する能力だとも言えるだろう。この能力がないままに他言語を学んだとしても、話せはするが話す中身は無いという状態に陥る可能性がある。
■結論
グローバル化により英語教育の重要性が増していることは疑いようがない。しかし、母語の教育を疎かにしてしまっては、言葉を道具として使いこなすことができなくなってしまうのではないか。プリスクールでの教育が子どもに与える影響を研究し、何歳ごろからの母語以外の言語の学習開始が望ましいのかを考えていきたい。
■結論の吟味
以上の研究を遂行するため、早稲田大学教育学部英語英文学科に入学し、原田哲男教授の下で学びたい。
*日本経済新聞(2019/2/13)「増えるインターナショナルスクール、専門家に聞く」より
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