■議論の整理
小中学校において、いじめや不登校などが問題になって久しい。いじめに関する法律が制定され、いじめは物理的な物だけに限らず、精神的なものも含まれるようになった。また情報化社会の中で、いじめは匿名化し、非対面的な場面でのコミュニケーション能力の低下が憂慮されている。
■問題発見
いじめや不登校を未然に予防し、他者理解や共感能力、ひいては自己肯定感・自己効用感を育むために重要なのは、ホームルームの経営だ。ホームルームで、どのような人間関係を作り、どのようなアイデンティティを持つかが、児童生徒の自己効用感を高めることにつながるのは言うまでもない。では、同じクラスメイトと人間関係を育成する際に、教師はどこまでそこに介入するべきなのか。これは非常に難しい問題だ。
■論証
ある研究によれば、他者と積極的に関わろうとするコミュニケーションに対して、自律的な動機付けを行った方が、統制的動機付けを行った場合よりも、学級満足度が高く、自己肯定感も高いという相関が報告されている※1。これは、自分で必要だと思って他者に話しかけたり、自分の興味関心で他者とコミュニケートする方が、無理矢理にコミュニケーションを取らせるよりも学級満足度が高いということである。
■結論
上記の報告は、ある種の理想モデルであり、そのようなホームルームが常に望ましいことを傍証している。ホームルームは基本的には一年という期間のサイズで設けられており、学級も30~40人程度が一般的なクラスサイズだが、この状況は都市部や地方との違いによってまた別の偏差が存在するため、一概には言えず、さらなる課題を要する部分があるだろう。
■結論の吟味
たとえば、地方の教育現場では、保育園からずっと高校まで一緒だったという人間関係が存在するし、数人サイズのクラスも多数存在する。教師はそこで醸成された人間関係や土着的な関係性にむしろ後から参入する側であり、自律的な動機付けに大きな影響を及ぼすことが難しい場合もある。これらの別の偏差が必要な集団に対して、より詳細な調査を行ってみたいと考え、貴学への入学を希望する。
※1山本琢俟・上淵寿「小中学生におけるクラスメイトとの関係に対する動機づけスタイルと学級満足感との関連」『早稲田大学大学院教育学研究科紀要:別冊』27(2) 2020
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