早稲田大学 教育学部 外国学生入試 志望理由書 提出例(小松香織ゼミ向け)

■議論の整理

専制君主の体制から共和国への移行において、社会保障制度はどのような機能を果たしたか。前近代から近代への国家体制への移行において、国王が統治する民から、国民が創出される過程が、多くの近代国民国家論において報告されているが、一方で社会保障制度がどのような役割を果たし下についてはいまだ研究の途上である。

 

■問題発見

国民国家が創出されるには、「国民」が立ち上がらなければならないが、その中で、教育や共通語の創出などはベネディクト・アンダーソンが『想像の共同体』で分析していこう、多くの蓄積がある。一方で、社会保障制度、とりわけ公的年金制度が国民創出に一役買ったことは、細かい報告があるわけではない。

 

■論証

自分の生活を誰が保証してくれるか、これが国民にとって重要な要因になることは間違いない。小さい単位として家族が挙げられるが、その一番大きな単位は国家だろう。自分の生活を最終的に保障してくれるのが国家である場合、国民は国家と強い結びつきを持つことになる。ある研究によれば、オスマン帝国がトルコ共和国に移行する際、おおくのジハードを経験し、戦乱がおおかったこの地域において、功労軍人に対して多額の年金保障がされていたことが報告されている。祖国のために多くの苦難を乗り越え、兵役に従事して生きた軍人たちに、より多くの年金を支払うべきだ、という理屈である。

 

■結論

一方でこの制度は、民主的かどうかと言われると疑問である部分が多数散見される。国家の福祉部門は、公平な年金支出を行いたいため、兵役軍人であろうが一般市民であろうが、年金加算期間を平等にしたい。しかし、兵役軍人はほかの人民よりも祖国のために尽くしてきたのだから、加算期間を倍にするべきだ。このような理屈がまかり通り、最終的にこの議論は可決する方向に進んでいることが報告されている※1。

 

■結論の吟味

このことは、ある意味で、国家と軍事と年金制度が相互的に補完関係にあることを証拠立てている。国家が国民を守るための年金制度がある意味で、祖国のために働いたかどうかという、王不在の中での忠義を示す装置として機能しているのだ。このことは福祉と国家の関係を考えるうえで非常に興味深い観点である。以上のように、従来見過ごされがちだった、福祉と国家の関係を考察してみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1小松香織「近代オスマン帝国における福祉と戦争」『早稲田大学大学院教育学研究科紀要』30 2020

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