議論の整理・・・
平安初期の渤海との交流について読み解く際、菅原道真は欠かすことのできない存在である。彼が900年に編纂した書に『菅家文草』があり、醍醐天皇に献上するために作成された12巻にわたる詩文集で、菅原道真の11歳から45年間の作品が掲載してある。当時最高の学者であり、詩人でもあった菅原道真の書物は日本の文化史を代表する重要な書であるとされているにも関わらず、近年まで十分な研究がなされていなかった。それは、本書について依拠すべき校訂本文が存在せず、読解に困難が生じたためである。近世には寛文版本と元禄版本が流布していることが確認されている。また、2008年には日本古典籍研究所が「平安朝漢詩文総合データベース」を公開したことで、研究が進み始めた。これによって、諸本の異同や系統について調査がなされ、現存する『菅家文草』の共通祖本は1 面7 行、1 行 21 字詰の冊子本であることや、元禄版本は寛文版本に基づくものであり、優れた校訂本文を提供していることなどが明らかになった。
問題発見・・・
平安時代の作品においては、文学的な価値のみならず政治的機能を果たし、また、宗教的・思想的な観点からも研究の余地がある。『菅家文草』も事務的な論文と芸術的な美文に分かれていることが確認されている。
論証・・・
『菅家文草』を精読した上で当時の宗教や思想面について調査項目を具体的に見出し、研究することを予定している。
結論・・・
上記について貴学文化構想学部にて日本古典文学に精通した河野貴美子教授のもとで上述の研究を進めることを希望する。
河野貴美子,渤海使在日本古代文学史上的 意義,浙江財経学院人文学院学術講座,2012.01.06,中国・浙江財経学院
河野貴美子・張哲俊(編),勉誠出版,東アジ ア世界と中国文化―文学・思想にみる伝播と 再創―,2012,366
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