議論の整理・・・
子を持つ可能性について考えたことのある人ならば、自分の子供は障害のない、できるだけ優秀な人間であって欲しいと願うのは自然なことであろう。しかし、国家として「不適切な遺伝子」を排除することは人権侵害にあたる。ナチス・ドイツの優生政策への反発から世界的に優生思想は危険視されてきたが、戦後のアメリカ占領下の日本においてバースコントロールが行われていた記録がある。アメリカにおいて行われていたバースコントロール運動の思想は、女性の自立のためという名目で優生学的発想も組み込んだものだった。その思想と断種や不妊手術の実績を日本に持ち込んだことは、日本において国民優生法や優生保護法の成立に影響を及ぼした。バースコントロールの流れは日本が自主的に行なっているものとして、占領軍は非干渉という立場を取っていたが、それは他国からの非難を恐れたことが理由に含まれている。
問題発見・・・
現在、ゲノム解析などの技術発展によって、生まれてくる子供についての情報が前もって分かるようになってきている。ゲノムの操作によって子供の能力を操作できるようにもなる可能性が期待されてもいる。バースコントロールが実際に行われてきた歴史と、優生思想を増長するテクノロジーが進化した現場で、改めて優生思想について研究したい。
論証・・・
研究を行う上で、優生思想の是非について哲学的に検討するというよりは、過去の歴史や世論を鑑みた上でどのような着地点がありうるのかを検討するのが現実的だ。テクノロジー自体についても学びたいと考えている。
結論・・・
上記の研究について、優生思想やジェンダー論に精通した豊田真穂教授のもとで進めることを希望する。
豊田真穂「アメリカ占領下の日本における 生殖の管理―優生保護法の不妊手術/ 断 種 ―」『アメリカ史研究』第36号2013年 63-82 頁
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