議論の整理・・・
国家のアイデンティティは往々にして芸術の中に見出される。潜在的に存在していたのが芸術作品という形になって表出することで、国民も、国外の人もそれを明らかなものとして認識するようになるのだ。アイルランドの国民性の創造と発見は、独立直後の20世紀初頭に見出される。特にこの国で特徴的な芸術媒体は、舞台芸術や文学作品が挙げられる。当時の作品は今でも盛んに上映され、読み継がれており、批評と継承によって磨かれてきた。独立による変容を表している劇作家としてショーン・オケイシーが取り上げられる。彼の戯曲に見られる過去の修正主義的視点が今なおアイルランドの観客たちに訴求力を持っているとされている。独立当時のアイルランドは軍事的ナショナリズムが台頭し、「血の犠牲」崇拝と身体軽視が蔓延していた。それに抗うようにオケイシーの戯曲の中では、身体感覚が重視されていることが指摘されている。
問題発見・・・
芸術作品を通して固められたナショナリズムは、どのように現代に継承されているのだろうか。
論証・・・
オケイシー作品の批評を分析することで、彼の作品への評価が時代の移り変わりとともに観察することができる。また、現在の演劇作品を研究することで、オケイシーが重視した身体表象がどのように現代に受け継がれてきたかも研究することを考えている。
結論・・・
上記について、アイルランド演劇に精通した坂内 太教授のもとで研究を進めることを希望する。
坂内 太“Struggling to Make Devastated Female Bodies and Minds Visible”早稲田大学大学院文学研究科紀要第3分冊(61)p.49 – 58, 2015年03月-
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