■議論の整理
日韓関係は近年さらなる緊張状態を見せている。竹島の領土をめぐる政治的な問題や、軍事機密をめぐる駆け引きなど実にさまざまだ。
■問題発見
韓国アイドルのエンターテインメント産業・コンテンツ産業がさかんである。いわゆるK-POPといわれる音楽産業は、アジアにとどまらず、アメリカでも人気を博しており、もはや全世界的な市民権を獲得している。以前の韓流と呼ばれるドラマコンテンツの流行時との相違点は、受容する世代が若者向けになったということだ。このことがこれからの日韓関係にどのような影響を与えていくのかを考察してみたい。
■論証
マルクスは、下部構造が上部構造を規定すると述べ、経済主体が上位にある文化や宗教を規定すると述べた。そうなると近年の文化消費は、経済と文化が混交した、国の記号消費だということができる。グローバル経済の中では、国は一種のアイコンになり、他国に記号として消費される。上記の「韓国」消費も同様の様相として説明することができる。このことはナショナルな排外性をたやすく飛び越える可能性を持っているかもしれない。
■結論
日韓のアイデンティティ形成には、単一民族神話によって、排外的な傾向を持つことが指摘されてきた※1。また日本は、西洋にはあこがれをいだき、一方ではアジアに対して低い指数を持ちがちであることがよく指摘される(「西高東低」型対外意識)※2。となると文化消費によってたやすく国境を超えることができる若者はこれらの排外思想の根拠をなしくずしにする可能性を持っているかもしれない。
■結論の吟味
一方で消費は歴史を無視することがある。過日、原爆を肯定するようなTシャツを着てしまった韓国アイドルが来日できず、紅白歌合戦に出場することができなくなったという出来事があった。世代差の対外意識を精査し、そこにある種の可能性を考えつつ、逆にそれによって見過ごされている政治的課題を照らし出し、歴史学習を構築していくべきだ。日韓関係の経済・歴史・文化の現状を質的・量的分析を通し、客観的データをもとに、新しい方向をさぐるために、貴学の社会学ゼミに入学することを強く希望する。
※1田辺俊介「日韓のナショナル・アイデンティティの概念構造の不変性と異質性の検討 : ISSP2003データを用いた多母集団共分散構造分析」『社会学評論』 62(3) 2011
※2田辺俊介「「日本人」の外国好感度とその構造の実証的検討–亜細亜主義・東西冷戦・グローバリゼーション」『社会学評論』 59(2) 2008
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