早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(谷口眞子ゼミ向け)

■議論の整理

日本が戦争に突入するとき、国家的な高揚を行うために、多くの作品がイデオロギーの中に回収された。詩人たちは戦争を賛美する詩を書き始めるし、映画は国家翼賛の物語を言祝いだ。その中に『葉隠』という秘書も紛れ込んでいた。

 

■問題発見

『葉隠』は1716年に佐賀藩士の山本常朝が、奉公の心構えをといた本として知られている。近世においては知る人ぞ知る秘書とされたが、日露戦争後に流通し、第一次世界大戦中に活字で出版されることになった。『葉隠』と聞くと、主君に仕えるための滅私奉公の精神を説いた、日本的な精神を象った書物として認識してしまう私たちはいまだに『葉隠』を正しく読めていないのではないか。

 

■論証

上記のような問題意識に立ち、『葉隠』が戦時中の日本に利用され、流用されていく過程を子細に分析した研究によれば、1930年代に古代の文脈を離れ、メディアに喧伝されていくさまが描き出されている※1。そこでは、『葉隠』の登場する人物たちが、戦局に適合的に解釈されていく様や、本来持っていた武家的な精神がいつのまにか日本的な精神として止揚されていくさまが分析されている。

 

■結論

このように、多くの書物や作品が戦争という色に塗り替えられ、日本的なるものに回収されている。そしていまだにその色から抜け出せない重要な作品が多く残っている。一時期転向研究のような断罪を行う研究がはやったが、一方で死してなお利用され、いまだに生命を与えられない不遇の書物や作品は多く存在するのではないか。

 

■結論の吟味

表現はその時代にとっての意味が与えられ、様々な解釈体系に開かれている読書行為の産物だ。表現はそのままの表現ではありえないという議論を受け止めたとしても、その中でとらわれている表現たちを解き放つ作業は必要だ。しかもそこに日本的なるものの刻印が押され、いつのまにかジャポニスムの刻印が押されてしまう今のアニメーション産業のように、作品本来が持つ力能を解放するための手立てはないだろうか。以上のような観点で戦時中の諸作品の再検討をしてみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1谷口眞子「1930年代の日本における「葉隠」の普及過程」『早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌 WASEDA RILAS JOURNAL』6 2018

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