■議論の整理
数年前に鈍感力と言う言葉がはやった。いろいろなことに過敏になりすぎるあまり、気にして作業が進まなかったり、メンタリティを保持できなかったりする生き方ではなく、様々な事象に対して鈍感でいること。この方がよりよく生きることができるという啓発的な用語だった。
■問題発見
一方で、楽観的に生きる、という言い方ではどうか。日本語で楽観的という表現をすると、気楽だ、のんきだ、というネガティブな意味合いが含まれているものの、将来に対してよいイメージを保持しながら物事に当たることができるという「鈍感力」に似たポジティブな側面を持ち合わせていることが分かる。
■論証
楽観性を社会学的に研究したものによれば、楽観性には「明るい見通し」「不安のなさ」「切り替え」「自信」「気楽思考」の5つの因子があると考えられ、これらがうまく作用すれば、学業成績や課題の遂行、生産性の向上などに寄与できるとしている※1。たとえば、超難問をテストに組み込んだときに、楽観性が高い生徒は、難問をすぐにあきらめてほかの問題を効率よくとくことができたが、一方で慎重な生徒は難問に時間を取られてしまい、生産性が下降してしまう。
■結論
楽観性は、今の時代を生き抜くキーワードになるかもしれない。情報過多の現代社会において取捨選択が迫られている。一つの情報がどの程度の有意差をもっており、自分にとってどのような価値を持つのかは、楽観性をもとに判断されている側面が強いだろう。
■結論の吟味
楽観性向上プログラムは、人々に大きな影響をおよぼす可能性をもつものだ。一方で、「自信」「気楽思考」などの因子は、短期的なプログラムでは向上しないことも明らかになっている。自信のなさなどは、長年培われた環境による因子が大きいため、個人の性質を容易に変えることはできないが、どのような方策が有効か、幅広い視野をもって研究してみたいと考え、貴学への入学を希望する。
※1魚地朋恵・前野隆司・越川房子「「楽観性向上プログラム」の開発」『日本創造学会論文誌』23 2020
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