早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(千野拓政ゼミ向け)

■議論の整理

「ジャパニメーション」として日本のサブカルチャーが世界に発信され、海外でも人気を博している。日本で放映されたアニメはすぐにインターネットサイトに投稿され、すぐに視聴可能になっている。夏と冬に二回東京ビッグサイトで開かれているコミックマーケットと同じような同人即売会も中国では開催されている※1。

 

■問題発見

物語を読むのではなく、キャラクターを読むという消費形態は、軽やかな交流の可能性を持っている。一つの物語の中に安住し、そこから外へ出ていかない従来の物語ではなく、多くのコンテンツを横断するキャラクターにはどのような可能性があり、どのような危険性があるのだろうか。

 

■論証

東浩紀は『動物化するポストモダン』※2で、キャラクターに心酔する現代若者の心性を「解離的」、「動物化」と述べた。東が述べている人間は、近代へのアンチテーゼとして、大きな物語を必要としない、軽やかな消費形態を行う動物としての人間だ。私たちはキャラクターをそれぞれの「萌え要素」に解体し、キャラクターが多数の物語に横断するさまを平気で受容している。

 

■結論

東アジアでは地理的環境も伴って、文化の熱心な交流が行われているが、しかしキャラクターは必ずしもコンテクストから自由なわけではない。日本という文脈を離れたとき、新たに中国という文脈に根付く必要がある。そのとき、どのような変形をこうむり、どのような着陸を行うのか。キャラクターという一種の装置が生成・駆動する様相を分析してみたい。

 

■結論の吟味

キャラクター需要は、一種のコミュニケーションであり、同人活動では実存的な充足を得ることができる。カルチュラルスタディーズが警鐘をならしていたように、歴史や文化的背景の影響があるはずだが、容易に受容されたキャラクターには歴史はあるのか。消されているとすればどのような政治がはたらいているのか。キャラクターを商品としてではなく、一つの重要な文化としてとらえ、コンテクストを横断するその性質を、日本という文脈と東アジアの文脈を相互横断的に考察したい。これらのことを貴学で研究したいと考え、入学を強く希望する。

 

 

※1千野拓政「東アジアにおけるサブカルチャー、文学の変貌と若者の心  アニメ・マンガ・ライトノベル、コスプレ、そして村上春樹」 早稲田大学総合人文科学研究センター『Waseda RILAS journal』 (1) 2013

※2東浩紀『動物化するポストモダン――オタクから見た日本社会』講談社 2001

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