早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(嶋﨑尚子ゼミ向け)

■議論の整理

日本が高度経済成長を果たしたその背景には、ことさら「日本型システム」と呼ばれる、特殊な状態が起因していたといわれる。その内実は、日本的な終身雇用システム、および年功序列型賃金制度などだ。近代=モダニティを定義づけるものとして、個人や進歩などのワードが挙げられるが、日本は果たしてそうかと言うと、その真逆と言ってもよいシステムを有しながら経済成長を遂げた珍しい国だ。

 

■問題発見

モダニティが個人主義的な要素を持つとすれば、日本の経済成長を促した日本の雇用システムはある種封建的なシステムともいえる滅私奉公精神に基づいている。会社は私たちを保証してくれる代わりに私たちは会社に尽くすという、一億層サラリーマン化が起こったのもこの時だ。近代的とはいえなくとも、その関係性が日本の豊かさを創造したことは間違いない※1。ではその問題点とは何か。

 

■論証

日本の社会モデルは、多くの場面で、家父長的な家族モデルを採用している。企業が自分の親で、私たちを庇護してくれる。その分子どもは一生懸命親に尽くす。会社が社員の家族に対して福利厚生が手厚いのもそのためだ。社宅を用意し、社員旅行を家族ぐるみで実施するのは日本型企業の特徴だ。日本はとかく、家族のモデルを採用したシステムが多い。

 

■結論

その中で賃金も払われず、能力を発揮することも許されず、ひたすら家事に尽くす存在として挙げられるのは女性だ。女性はつねに家族の中で忘却され、抑圧されている。十分に能力を発揮することができない末端には常に女性がいて、その活躍は縁の下の力持ちとして男性の支配下にある。ということはつまり、女性の不可視化が経済成長を創造したと考えることもできるかもしれない。

 

■結論の吟味

1970年代のウーマンリブ活動を経て、現在では女性のフェミニストも増え、ジェンダー研究も盛んだ。日本の家族という存在において、女性が抑圧され、不可視化されてきたことは多くの研究が証明していることだ。現在では女性の活躍が叫ばれ、雇用制度や育児制度なども充実している。これから、女性が活躍するときに、従来の男性主義的経済成長はもうモデルとして採用することができないし、女性もそれを模倣するべきではない。新しく正しい男女平等社会を築くためにも、今一度、高度経済成長下の女性と男性の性役割を踏まえながら、研究したいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1嶋﨑尚子「〈日本型システム〉の形成過程とその特性」『学術の動向』23(9) 公益財団法人日本学術協力財団2018

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