議論の整理・・・
クラウディアヌスはローマ帝国の宮廷詩人である。皇帝ホノリウスや将軍スティリコに仕えて、称揚詩や敵の誹謗詩を詠んだことがわかっている。彼の残した祝婚歌は、恋の神らが愛の女神ウェヌスを促して、男女を結婚に導くという構図がある。これは1世紀の詩人、スタティウスの影響を受けていることがわかっている。それ以前の時代の愛は結婚が済んだ後の夫婦愛が重視されており、結婚に至るまでの恋愛については声高く歌われてはこなかったのだ。クラウディアヌスの場合、皇帝と権力者の娘の結婚という政略結婚を、詩の中で理想的な恋愛結婚としてローマ神話の登場人物らを用いて創作しているということが読み取れる。そしてクラウディアヌスの詩がスタティウスの作品と異なる点は、このように権力者への称賛の姿勢をはっきり作中に含んでいる点である。例えば、「フェスケンニナ」の第二番の締めくくりで結婚を勝利に見立てて西ローマ帝国の繁栄を歌い上げているとの意図が見られる。また、ローマ固有の婚礼における習慣が詩の中から知ることができる。「フェスケンニナ」の中に見られる「婚礼の冷やかし」の場面がそれにあたる。これは婚礼の行列に対して参列者が卑猥な冷やかしを投げかける習慣であった。
問題発見・・・
結婚や恋愛を取り巻くモチーフはどのような変遷を辿っているのだろうか。
論証・・・
祝婚歌や婚礼にまつわる芸術品などを研究し、他国や別の時代と比較することで、当時の結婚観が明らかになると考えられる。
結論・・・
上記について貴学文化構想学部にて西洋古典文学に精通した宮城徳也教授のもとで上述の研究を進めることを希望する。
宮城, 徳也「祝婚歌の伝統と革新 : スタティウスとクラウディアヌス」西洋古典論集 (1994), 11: 227-242
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