■ 議論の整理
看護師の離職率の高さは、統計的には一般労働者とも大差ないととれる。しかし、病院という特殊な職場において、慢性の人材不足や担当者の度重なる交代は看護師だけではなく、患者にとって、また病院や医療分野全体にとっても早急に有効な対策が望まれる課題である。2019年4月から働き方改革関連法案の一部が施行され、医療業界においても、労働者の個々の事情に応じた柔軟な働き方が選択できるよう試行錯誤が進んでいる。
■ 問題発見
しかし、医療業界という専門性が高く特殊な労働環境を考えた時、勤務体系の改善や待遇の向上といった表面的な解決策だけでよいのだろうか。私の母も看護師であることを生きがいとしてキャリアを築いてきた一人だが、離職の危機は何度かあった。原因を尋ねると、夜勤や仕事と家庭の両立も大変だったが、担当科によっては患者のストレスとの向き合い方に行き詰まりを感じた時期があったとのことだった。医療業界の労働環境改善を考えるとき、データや理論と現場を行き来しながら、次のような課題を丁寧に検証していく必要を感じた。
■ 論証
一つ目は、医療業界特有の組織風土の問題である。医療全体はもちろん各科の職務と倫理観や価値観が、看護師が抱えるストレスとどう関係しているのかを洗い出すことである。
二つ目は、患者が抱えるストレスと看護師のストレスの相互作用について明らかにすることである。とくに重病患者や長期入院を余儀なくされた患者が抱えるストレスと向き合う現場では、そのことが看護師のストレッサーとなり、ケアの在り方に影響することも十分あり得る。
三つ目は、上記二点を踏まえて、看護師自身のストレスケア、組織全体でのサポート体制についての現状把握と改善案を検討することである。
■ 結論
私自身も看護師を目指しているが、生きがいを感じながら医療分野で貢献していくためにも、患者や看護師としての自分と向き合うための理論や手法を学びたいと考えてきた。
■ 結論の吟味
そのためにも貴学への入学と、看護の現場を人間科学や人間理解の側面から捉え直し、組織風土やストレスについての研究を重ねてきた塚本尚子教授の研究室への入会を強く希望する。
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