■ 議論の整理
現在、日本各地へと伝播拡大している「よさこい祭り」は、1954年に高知市で生まれた「よさこい祭り」にその起源を見出せる※1。そもそも、日本の他の伝統的祭りと比べて新しい行事であるが、92年に札幌に「YOSAKOIソーラン祭り」として伝播して以降、全国に急速に広まった。伝統的な祭りの大前提としての「地域固有性」に対して、よさこい祭りは伴奏の楽曲や踊り方といった流儀以外の自由度の高さが特徴である。80年代以降、地域共同体の解体によって多くの伝統的な祭りが危機に瀕する中、従来の地域のあり方や祭りの縛りを超えて、柔軟に、新たな地域の創造にもつながっていくよさこい系祭りのあり方に注目が集まっている。
■ 問題発見
しかし、なぜよさこい系祭りは、広がっていったのか。矢島※2は、グローバリゼーションの時代において、人々のアイデンティティの確立にはローカルなものが必要であり、よさこい系の伝播型祭りが新たな「自分たちの文化」として確立されていくと言う。そうした時代的変遷における受容の在り方に加え、私は、それを可能にした日本の精神的風土のあり方に関心がある。
■ 論証
日本人は、様々な海外文化や宗教を受容し、長い時間をかけて日本風にアレンジしながら根付かせてきた。よさこい系祭りの持つ柔軟性と、日本人の宗教性や精神性がどのように作用して受容され、またオリジナル性を主張しあうのではなく伝播という形で拡大していったのかを、考察していきたい。
■ 結論
具体的にはよさこい祭り関係者、特に導入期の関係者へのインタビューを実施するとともに、宗教学や歴史学の知見と照らし併せながら、分析・考察を加えたい。また、その作業を通して、現代の日本社会の精神風土のあり方についても迫っていけるのではないかと考えている。
■ 結論の吟味
上記の研究を行うにあたり、貴学の総合人間科学部で宗教学の研究に従事され、伝播型祭りの形態との関連にも詳しい芳賀学教授のゼミに入会することを強く希望する。
※1 芳賀学(2013) よさこい祭りの組織的特徴 宗教研究 86巻4
※2 矢島妙子(2018) 伝播型祭りの展開における変容 「よさこい」の構造分析 日本文化人類学会大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会.日本文化人類学会、p116
コメントを残す