■ 議論の整理
1990年代に誕生した人間開発の概念と人間開発指数₍HDI₎は、従来の経済学の指標では「先進国か発展途上国か」に振り分けられてきた世界の見方を大きく変えた。さらにジェンダー開発指数₍GDI₎やジェンダー・エンパワメント指数₍GEM₎、人間貧困指数₍HPI₎、さらにケイパビリティ概念などが登場し、具体的な問題分析と、地域に応じたターゲット目標を定めた開発計画の立案・実施・評価を可能にした。
■ 問題発見
例えば「世界最大の公的雇用プログラム」とも称される「全国農村雇用保証法」(NREGA)についても多くの開発経済学者がその経済効果について分析し、雇用率の変化、消費動向推移、プログラムの実施状の問題点などを提示している。しかし、「何を目的と捉えるか」によってプログラムの分析の視点や評価は大きく異なる。プテンカラム・ジョンジョセフ教授の分析が卓越している点は、国連ミレニアム開発目標の「貧困率削減」に照らして分析し、貧困率の高い地域の女性を含む人々が大都市に移り住むことなく、地元でまともな仕事で家計収入を向上させ、国民所得にアクセスできるようになったことを高く評価していることにある※。他のプログラム同様、様々な問題はあるものの、それは、インドにおける地域間格差を表す貧困地図を塗り替えることや、農村のガバナンスの改革にも繋がると考えられる。
■ 論証
開発経済学の重要な役割は、開発政策の分析に人間開発の視点を加えることによって、ミレニアム開発目標のようなグローバルな目標と農村の人々の生活実態を繋ぎ、ローカルな人々にとっての具体的な効果を検証し、改善のための道筋を作ることではないだろうか。
■ 結論
よって、開発途上国の様々な現実に学び、現地の人のBEN(ベーシックヒューマンニーズ)向上に貢献する開発経済学の視点を身につけたいと考えている。
■ 結論の吟味
上述の目標を追求するために、貴学のプテンカラム・ジョンジョセフ教授のゼミに入会し、人間開発と持続可能な開発という概念目標に照らした経済学を学ぶことを強く希望する。
※John Joseph PUTHENKALAM(2011) Right to Access to National Income: Reflections on India’s Rural Employment Guarantee Strategy The Journal of Sophia Asian Studies No.29
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