■ 議論の整理
近年の女性の就労を巡る状況は、1990年代には男女共同参画社会基本法の制定や均等法の改正、2000年代以降は少子化対策として働く母親支援策の充実化も図られ、制度上においては改善の方向に進んでいると見られている。しかし実態においては女性・母親の就労支援が功を奏しているとは言い難く、さらには女性労働の非正規化および女性の貧困化が問題視されている。
■ 問題発見
ではなぜ、法整備や制度改善の追い風があるにも関わらず、働く女性・母親をめぐる状況は反対に厳しくなっていくのだろうか。
■ 論証
三浦教授によると、政府の女性就労支援政策は、ジェンダー平等化を装いながら、実は女性を労働力とすることで経済成長戦略、少子化対策、社会保障費抑制の3つの目的を達成することが目指されている。つまり、女性は労働人口減少を補い、中でも働く母親を増やすことで労働力不足と少子化問題を同時に解決し、税・社会保険料の納付者となることが期待されているのである※。しかし、この3つの目的は政策パッケージとしてまとめられるには相矛盾する点が多すぎるため、理論上は女性支援の形をとっても、ジェンダー平等という目標が無効化され、現実には女性を窮地に追いこんでいるのである。
■ 結論
このような矛盾点を問い直すにあたり、日本の縦割り政策がネックとなってきたことは言うまでもない。この問題を解消するためには個々の分野からのアプローチではなく、分野間を横断するジェンダー法学の視点からの分析が有効である。また、現実的な問題の解消のためには、ジェンダー平等化という大きな目的のもとに、分野間の連携による研究の推進が必要である。
■ 結論の吟味
女性にとって安心な就労支援とは何かを考えていくにあたり、ジェンダー法学の観点から問題の解明と提言に貢献してきた三浦まり教授のゼミに入会することを強く希望する。またこの研究を行うにあたり、国際間比較は不可欠であり、グローバルに開かれた理念と学習環境を持つ上智大学法学部は、私にとって最適の学びの場であると確信している。
※三浦まり(2015) 新自由主義的母性ー「女性の活躍」政策の矛盾.18 ジェンダー研究,2015,53.
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