■ 議論の整理
現代の私たちをとりまく様々な社会問題、例えば少子高齢化、貧困と格差、性の多様性などは、どれをとっても無関係な人は一人もいない。しかし、当事者でない人の多くは「私には関係ないからよくわからない」と、無知・無関心の態度を決め込んでしまうことが多い。これらの問題には唯一正しい答えがあるわけではないため、批判的に問い続け、様々な解決方法を考えては試してみるという姿勢が必要である。
■ 問題発見
しかし、正解のない難題を前に、多くの人は思考停止状態に陥ってしまうか、無知・無関心を決め込み、その問いに向き合うことを避けてしまう。ではどうすれば、この無知・無関心の壁を超えていけるのだろうか。
■ 論証
私は、哲学的対話の実践にその可能性を見出したい。特に、子ども期に対話の姿勢や、答えのない問いを問い続ける力を身に着けることが重要であると考える。問いを考え続ける作業は孤独な作業だが、人の意見を踏まえることなしには、独善的な思考に終わってしまう。そのため、対話の場所やルールを確保して行うことが重要である。その時、教師は正解を教える者ではなく、一人の対等な参加者として、またファシリテーターとしての役割に徹することが重要である。学校の教科の授業は、基本的に正解があるテスト方式に慣れているため、外部との連携により、大人も子どもも共に共同探究者であるという共通理解の元に進めることが必要である。
■ 結論
子ども向け哲学対話の実践プログラムをファシリテートするために、以下のように研究を進めたい。
1)学ぶ:イマヌエル・カントの理論を軸に、様々な哲学者の思想を学び、哲学者たちが現代に生きていればどのように社会問題に切り込んでいくかを考える。
2) 実践する:学校への呼びかけを行い、共通理解を築き、連携しながら計画・実施・評価・改善を行う。
■ 結論の吟味
この問題意識を追求していくためは、自身が哲学の研究者であり、子ども向け哲学対話のプログラムを展開している貴学の寺田俊郎教授のゼミに入会することを強く希望する。
寺田俊郎. (2017). 哲学対話の可能性. 国士舘哲学, 21, 18-26.
コメントを残す