■ 議論の整理
私は、近代から現代のドイツの文化や社会を読み解く手がかりとして、ドイツ演劇に注目したい。ドイツには公的な演劇センターが多数あり、一方で民間の劇団やダンスカンパニーの存在感も大きく、それに対する助成金も豊富である。その伝統は中世の宗教劇まで遡り、宮廷演劇を経て、市民階級の台頭ともに18世紀のゲーテやシラーによるシュトゥルム・ウント・ドラングと呼ばれる文学運動につながっていく。19世紀後半には写実主義や自然主義が主流であったが、その反動から内面を重視する表現主義が興り、二つの大戦期にかけては社会主義や政治的影響を受けてブレヒトらによる叙事詩的演劇が生まれた。そして、ドイツ演劇は冷戦期からベルリンの壁崩壊と東西ドイツの統一を経て現在に至るまで、世界の中でも特異な存在感を持ち続けている。
■ 問題発見
では、ドイツ演劇の特異性とは何であろうか。また、日本や世界が今。ドイツの演劇に魅せられるのはなぜなのか。
■ 論証
ホロコーストや国家の分断と統一といったドイツ特有の題材への期待を含む特殊的側面と、それらの特殊な状況下においても民族や文化を超えた共感性を呼ぶ普遍的側面は、ドイツ演劇の大きな魅力であろう。加えて、20世紀の激動の時代にブレヒトが提唱し、大きな影響を与えた叙事詩的演劇のスタイルや効果に注目したい。中でもその継承者で今日の日本でも上演されるハイナー・ミュラーの戯曲や、現代の戯曲作家であるデーア・ローアのテクストが持つ魅力に迫りたい。
■ 結論
今日、ドイツ演劇の戯曲は論創社から刊行されている『ドイツ現代戯曲選30』などで、日本語でも堪能できる。しかし、ドイツ演劇を理解するためには、ドイツ語そのものに内包された響きや意味をつかむことが重要である。また、その背景にある各時代の文化や社会状況を多面的に学べる上智大学に進学し、現地の学生とも相互交流をしながら学びたいと考えている。
■ 結論の吟味
私の夢は、演劇や芸術の分野を通して、EUと日本の国際文化交流の架け橋となることである。そのためにも、ドイツ戯曲の翻訳や研究分析、日本への紹介に貢献されてきた貴学の三輪玲子教授のゼミに入会し、学ぶことを強く希望する。
※三輪玲子. (2012). ドイツ演劇の現在: 国際演劇協会 「ドラマリーディング・ドイツ編」 より (特集・ヨーロッパを担う国). ソフィア: 西洋文化ならびに東西文化交流の研究, 60(2), 51-65.
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