■ 議論の整理・・・
インターネットの普及で社会は大きく変わった。インターネットがデジタル機器の普及を後押しし,車載機器にもデジタル化が波及した。ネットワーク接続可能な車載機器も今では標準装備となっている。車載機器をネットワークに接続することにより,車両からネット情報にアクセスできるだけではなく,実走行車両の車載センサからリアルタイムで情報収集することも理論上可能となる(*2)。これは,路上を実走する各車両を移動式センサと見立てた,スケーラブルな移動体ネットワークの構築もまた可能であることを示唆している。今のところ,各車両の車載センサからのリアルタイム情報を有効利用するまでには至っていない。しかしながら,デジタル機器の普及による社会規模のネットワーク化が進行するにつれて,車載センサから得られるリアルタイム情報をもっと有効活用すべしという社会的ニーズも生まれている。ネットワークを介して車載センサから取得した情報を有効活用し,変化激しい現社会が抱える課題解決の一助となるような情報環境を構築することが期待されているのである。
■ 問題発見・・・
例えば,固定式防犯カメラを補完するものとして,近年普及しつつあるドライブレコーダー(車載カメラ)を移動式防犯カメラとしてシステム化すれば,犯罪捜査,事故調査,犯罪抑止等に役立てることができるはずである。
■ 論証・・・
一方,車載カメラをシステム化するにあたっての課題は,ネットワークのトラフィック制御にある。動画データの保存期間は各機器のストレージサイズに依存する。上書きによる動画データ喪失を回避するには,動画データをアーカイブする必要がある。しかし,動画データはファイルサイズが大きいため,各機器が思い思いに一斉送信すれば,ネットワークのトラフィックがパンクすることは自明である。
■ 結論・・・
そこで,WIDEプロジェクトに参画し,かねてよりコンピュータネットワークを専門に研究している貴学環境情報学部の楠本博之教授に師事し,車載カメラから得られる動画情報の有効活用による防犯情報基盤ネットワークのシステム要件について研究したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
楠本博之教授は,コンピュータネットワークについての著作も多く,コンピュータネットワークの理論研究(*1)についても実績があることから,貴学の楠本博之研究会であれば上述の研究を行うことができると考え,貴学SFCに入学し楠本博之研究会に入会することを強く志望する。
(*1) 藤枝俊輔,渡部陽仁,楠本博之.“仮想ブロードキャストリンクを利用した片方向通信路の透過的経路制御”, 情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)1999, No.18, pp.49-54, 1999
(*2) 植原啓介.“プローブ情報システム:車載センサを活用した環境情報の取得”,情報処理,Vol.51, No.9,pp.1144-1149, 2010
コメントを残す