ここからは、私が体験したAO入試における逆転合格例について話したいと思います。どのような場合に逆転合格ができるか、またどのような場合には難しいかを把握することで、そもそもAO入試を受けるべきか否かの判断ができると考えるからです。
・ 不登校経験があってもAO入試に合格することはできるのか?
まず、ここでは不登校経験があっても早慶上智のAO入試に合格することができるかについて答えたいと思います。結論からいえば、不登校経験があっても早慶上智のAO入試に合格することは十分可能です。ただし、その場合には
1. 不登校でも受け入れられる可能性のある大学・学部選び
2. 不登校になった理由をどう説明するか
が重要になります。
まず、1.についてですが、これは前述のとおり、判断材料が多いAO入試であればあるほど不登校経験などのマイナス要素は考慮させずに済みます。たとえば後述するように私は上智大学の海外就学者向け入試で、日本に帰国後不登校になり高校を中退した教え子様を合格させたことがありますが、このケースでは、志望理由書・小論文・面接・英語資格など見られる要素が大きかったことが勝因でした。見られる要素が多ければ不登校など少々難ありでもAO入試で通る可能性は十分あります。
また、元不登校の教え子様の中には、慶應SFCの合格者もおります。この教え子様はある競技で全国大会に出るほどの実力者でしたが、プレッシャーなどの問題で不登校だった時期がありました。これについては志望理由書でしっかりその理由を説明したところ、面接でも不問とされました。
このように不登校だからといって必ずしもAO入試に不利なわけではありません。考慮要素が多い大学・学部のAO入試を受験したり、しっかり不登校になった理由を志望理由書や自由記述で説明できれば不登校は必ずしも不利になるわけではないのです。
・ 大学が不登校経験者に抱く不安はなにか?
では、そもそも一般にAO入試で不登校経験者が不利だと言われている理由はどのようなものでしょうか。第一には、やはり高校時代不登校だった生徒を大学に入れたときに、大学でも不登校になるのではないか、という懸念が存在しているように思います。
この部分だけを払拭できれば、不登校経験者でも早慶上智のAO入試に合格することは不可能ではありません。では、不登校気味になった際にできる対応としてどのようなものがあるかここから考えていきましょう。
・ 大AO時代、不登校になった段階で親御さんがすべき対処
まず、大前提として私達が把握しておかなければならないのは、今日の入試情勢が「大AO時代」だということです。首都圏の私大の一般入試合格者定員が大きく絞られている中で、AO入試に関しては定員も大盤振る舞い、倍率も一般入試と比べると遥かに低く、入試制度そのものが過渡期・端境期のため、学力の高い生徒が不合格になったり、逆に学力に極めて乏しい生徒がAO入試に合格するという混乱を極めた情勢になっております。
こうした状況下で私達がすべきことは、まず不登校になった際に、AO入試で不利にならないように立ち回ることです。不登校になること自体は特段悪いことではありません。私自身も不登校でした。しかし、不登校がAO入試に不利に働く範囲まで長引くのはよくありません。ここからはもし不登校気味になったらどうすべきかについて一通り書いていきます。
まず、不登校気味になったらさっさと高校をやめましょう。目安としては三日間学校に行きたくなくなったら高校を辞めてしまってかまいません。そして、自分の学力よりも遥かに学力が低い全日制の普通科高校に転入しましょう。最悪通信制だとしても通学課程がある高校を選び、必ず通学してください。大学側が不登校経験者に懸念するのは通学できないかもしれないということですから、この点を払拭することが大切です。
私自身もそうでしたし、あるいは私の教え子様でも多いパターンですが、なまじ優秀な高校に入学したばかりに不適応を起こすケースは多いものです。また優秀な高校に入学するとどれほど勉強を頑張っても良い内申点を取ることは困難ですから、AO入試には極めて不利です。さっさと今の高校を辞めて別の高校に転入しましょう。
この場合注意しなければいけないのは、高卒認定は少なくともAO入試では極めて不利ということです。なぜなら、大学側が不登校経験者に懸念していることは、まさに学校に通えないかもしれないということだからです。早慶上智のAO入試で合格するためには可能な限り通学する必要のある学校に転校し、少なくともすべてのコミュニティに対して社会不適合でないことを示す必要があります。
・ 不登校経験を乗り越えるための海外留学
また、不登校になる原因として、そもそも日本人のコミュニティに馴染めないというケースもあります。私は趣味が海外旅行で月1回ぐらいのペースで1週間ほど視察を兼ねた海外旅行に行きますが、そうした際にも日本人は陰湿だなあ、他の国はいいなあ、と思うことは少なくありません。(もちろん、日本の良さも改めて実感します。一長一短です。)
私の教え子も、いまや全世界に広がり、合格者だけ見ても、インドネシア、シンガポール、タイ、台湾、バングラデシュ、フランスと全世界に広がっています。そうした中でこうした国々からの帰国子女が日本の高校に来て不適応を起こすことは珍しくないことを私は良く心得ています。
そうした際に私がおすすめするのは、いっそまた海外の高校に戻ることです。幸い、日本では大学に入ってからはさほど他人に干渉しない文化が(優秀な大学であればあるほど)根強いので、大学から日本に戻ることを念頭に入れて、海外就学者向け入試などの要件に適合する形での留学を検討することは現実的な選択肢かと思います。
・ 不登校経験を乗り越えるためにプロフェッショナルになること
なにはともあれ、不登校経験を乗り越えるために大切なことは「プロフェッショナル」になることです。その道の第一人者であれば、不登校経験などAO入試の合否を決める上ではさほど大きなファクターではありません。
一番わかりやすいのは、なにがしかの競技や分野の全国大会に出ることでしょう。そうしたプレーヤーの中にも精神を病み不登校になった人は少なくないので、そうした人の下剋上の手段としてもAO入試は十分検討に値します。
ただ、多くの場合不登校生はそうした輝かしい実績を持っているわけではありません。そういった場合におすすめするのが、英語力や論理力などその大学学部が特に強く求めている要素においてプロフェッショナルといえる実力を付けることです。
たとえば今日では、英語ができれば内申点の制約なく受けられるAO入試は早稲田大学のグローバル入試など多数あります。また、中央大学法学部のAOなどは、試験で求められるディベートと小論文のクオリティーを徹底的に上げていけば、多浪生でも合格している例があります。このようにAO入試にもまだ下剋上のチャンスがあり、不登校や多浪などの理由で簡単にあきらめてはならないということがよく分かります。
・ 不登校経験はAO入試ではかなり厳しい要素だが合格できないわけではない
もちろん、大前提として不登校だと、AO入試はかなり厳しいスタートになることは最初に申し上げておかなければなりません。不登校からAO入試を受ける教え子様の親御様に必ず申し伝えることとしては、非常に厳しい戦いだということです。
ただし、不登校ということが決定打になってAO入試に落ちる、ということもまた考えづらいです。一つのマイナス要素ではありますが、志望理由書・自由記述、英語資格、本番の小論文・面接・ディベートなどで十分払拭可能なマイナス要素です。
不登校が原因でAO入試に落ちたのではないかと相談に来る例の多くが、そもそも志望理由書・自由記述の面で大きな問題を抱えています。事実、SFCAOI期で書類審査で落ちた不登校の生徒が、II期では書類をブラッシュアップした結果、面接まで進めたという事例もあります。
このようなことを考えると、
1. 不登校だからといって、必ずしも不利になるわけではない
2. ただし、そもそもAO入試に合格することは、(特に不登校生が受ける内申制約のないAO入試では)そこそこ難しいことではあるので、一般入試も視野に入れる必要がある
ということがいえます。
・ 不登校経験があっても合格しやすい一般入試を同時に考える
さて、ここで一般入試の話が出てきました。
おおよそ、不登校の生徒はそもそも勉強が苦手ですから、一般入試については考えないのが通例ですが、私はそれは非常にもったいないことだと考えています。たしかに、ある程度素質がものを言う教科がなくはないことは事実ですが、一方で多少の努力で大学入試レベルであれば十分突破できる教科が多数あることも事実です。ここからは不登校からAO入試を目指すにあたって同時並行で進めるべき一般入試向けの勉強についても話したいと思います。
・ 英語力は不登校経験があっても伸ばしやすい要素
たとえば、英語力は不登校経験があっても伸ばしやすい要素の一つです。そもそも英語などというものは、英語圏の人であればほとんどの人が流暢に話せる言語であり、習得も方法を間違えなければさほど難しくありません。
不登校の要因が学力不足に起因するのか、それと不適応に適合するかによっても異なりますが、英語の勉強についてのロードマップは中学一年生レベルの英語力に自信がない人も含めて、だいたい共通しているものです。
1. まずはくもんの中学英文法の後ろにある青い冊子の問題を一通り解き、現在の自分の実力を把握します。この後、間違いがあった部分については解説ページを写す形で復習し、正しく答えられるまで問題を何度もやり直します。
2. 次いで、くもんのハイレベル中学英語を1.と同じやり方で解きます。
3. ここまでできたら、一通りの英文法は(仮定法と関係副詞を除いて)網羅したことになりますから、単語の暗記を開始します。Duo3.0→リンガメタリカ→アカデミック5冊の順番で1日1Section or passageずつ暗唱できるまで100回以上CDを聞きながら音読します。
4. Duo3.0の勉強と同時並行で関正生先生の英文法ポラリスシリーズを一通り解きます。これも全問正解するまで繰り返し解き続けます。1日30問ずつ新しい問題を解き、正解不正解に関わらず昨日・おととい演習した問題を復習するのが大事です。これを反復しましょう。
5. ポラリスシリーズで常時満点が取れるようになったら、Z会の英作文のトレーニングなど自分が志望する大学・学部や資格試験と傾向が似ているものを演習してください。
このような形で練習すれば、英語力はある程度までは付きます。少なくともAO入試で他の受験生と遜色がないぐらいまでには英語力が伸びます。高校生は目安として、英検準1級・TOEIC800点を目指してまずはがんばってください。
・ 基本的に不登校期間が長ければ長いほど一般入試を検討すべき
また、不登校生がAO入試と一般入試を検討する際ですが、基本的には不登校期間が長ければ長いほど一般入試を検討すべきであるということが成功のセオリーとなります。もちろん不登校経験者が合格した例は慶應SFCでも上智でもなくはないのですが、例外的なこととして受け止めてください。基本的には不登校期間が月をまたいだら、AO入試の準備は進めつつも一般入試の合格も同時並行で目指してほしいと思います。
・ 不登校経験を面接で聞かれたときにどのように答えるか
また、不登校経験を面接で聞かれた場合の対応についてですが、体育会系の場合は逃げ方としては「公欠がもらえない大会やその準備があったために欠席した」と述べてしまっても構わないと思います。AO入試は一生に一度のチャンスですから、ある意味ウソも方便という側面はありますし、実際そういった誇張で合格している人は多いものです。
しかし、人生の生き方としてそういった生き方はいかがなものかと、私個人としては思います。やはり正直に言ってしまったほうが良いと思います。自分の中で自分の不登校経験について整理がついていて、周囲の大人からも理解を得られるように説明できるのであれば、面接でなにを聞かれてもおそるるに足りません。私達はその手助けはできるかと思います。
・ 上智大学ではみんなが行かない地域での経験は高く評価される可能性が高い
また、余談になりますが、上智大学ではみんなが行かない地域での経験は高く評価される可能性が高いことを申し添えておきます。なぜなら、上智大学は早稲田・慶應などと比べても非常に語学教育に熱心な大学であり、AO入試でも言語ごとに募集をかけているぐらいなのですが、日本人にとって親しみにくい国の出身者や、日本人にとって親しみにくい国に長く渡航していた教え子様をかなり優先的に合格させています。いままでの例だとカンボジアやウラジオストクでの経験がかなり高く評価されており、海外就学者向け入試であれば不登校経験・高校中退経験があったり、あるいは公募推薦であれば内申・英語資格ともぎりぎりでの出願でも合格しています。ぜひ一つの参考になさってください。
コメントを残す