■設問
- テーマ(法律学科):
「現在、日本は人口減少社会に突入し、持続的経済成長を続けるためにも、男女共同参画と女性の社会進出は不可欠です。これまでに政府はさまざまな取り組みを行い、近年では働き方改革を掲げ、女性の働きやすい環境作りを推進してきた結果、この30年間で女性の就業率は上昇しました。しかし男女間での格差が依然として存在するなど、問題も少なくありません。資料1、2、3、4を参考にし、こうした女性の社会進出を抑制する現象を生む制度的・社会的・文化的な要因について多角的に議論を行ってください。」
内閣府『男女共同参画白書 平成29年度版』から4つの図表を資料として問題文に添付 - テーマ(政治学科):
国立社会保障・人口問題研究所の予測では、国の総人口は2015年から2065年までの50年間に、1億2709万人から約4000万人以上減って、8808万人になるとされています。生産年齢人口の減少が深刻化し、少子化の進む日本において、その対策の一つとして移民受け入れを拡大するべきだという意見があります。その一方で、欧州諸国の例にあるように、たとえば治安悪化などの理由をあげてそれに対する抵抗も強く見られます。日本は今後、移民受け入れを大幅に拡大するべきでしょうか。また移民が大幅に増えた後には、日本は多民族国家としてのアイデンティティを強めていくべきでしょうか。多角的に議論を行ってください。
■想定される議論
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法律学科
それでは女性の社会進出が抑制される要因について話し合っていきます。設問にもある通り、要因は大きく3種類に分けられます。制度的要因、社会的要因、文化的要因の3つです。まずはそれぞれについて、どのような要因があるか列挙していきましょう。
1つ目の制度的要因について。
配偶者控除が原因と考えられます。配偶者控除とは、家計を支えている世帯主の配偶者の所得が150万円以下の場合、世帯主は税控除を受けられ、支払う税金が少なくて済むというものです。家計の中で男性の稼ぎが多い場合、女性は150万円以上働くインセンティブが少なくなるわけです。これにより、女性の社会進出が抑制されると考えられます。
この要因について質問はありますか?
《例えば配偶者控除の基準額を引き上げることで、配偶者控除による問題を解決できないでしょうか?》
難しいと思います。例えば、150万円という基準を200万円に引き上げたとします。そうなったとしても、結局200万の壁ができてしまい、女性たちが制限をかけながら働くという現状には代わりがありません。基準額の引き上げでは、女性の社会進出を抑制する要因の根本的解決にはならないでしょう。
他の原因として終身雇用制が挙げられます。終身雇用制とは、企業が、労働者を定年まで雇うという前提で採用を行うものです。女性は男性と比べると、離職率が高いです。なぜなら出産や育児に伴い仕事を退職することがあるからです。したがって、一度雇っても辞めてしまう可能性が高いという理由から、企業が女性を積極的に雇いたがらないのです。
この要因について質問はありますか?
《現在では、終身雇用制も少しずつ緩和され、転職する人も増えてきたと思います。この問題は徐々に解決するのではないでしょうか?》
おっしゃるとおりだと思います。どんどん労働市場における流動性は高まっているため、この要因は解決する傾向にあると思われます。しかし、依然として、諸外国と比べると労働市場が硬直的であるというのも事実です。
2つ目の社会的要因について。
保育園の数が足りていないことが原因と考えられます。待機児童問題などで明らかになっているように、保育園の需要に対して供給が追いついていません。出産した後、職場復帰したいと考えている女性がいたとしても、保育園に子供を預けられないため、育児のために職場復帰が叶わないです。
この要因について質問はありますか?
《なぜ保育園の数が足りないという問題が起きているのでしょうか?》
例えば、賃金が低いことや休みが少ないことなどが原因に挙げられます。
3つ目の文化的要因について。
男性が育児参加していないことが原因と考えられます。「男は労働、女は家事」というのが昔の日本では当たり前でした。現在でもそのような考えを持っている人は少なくありません。つまり、育児は女性の仕事だと考える人が一定数いるということです。これにより、男性が育児参加しない場合、女性が仕事を休職あるいは退職して育児をする必要があります。これが女性が社会進出しにくい原因となります。
この要因について質問はありますか?
《最近では、「イクメン」などという言葉が出てきたように、育児参加する男性も増えてきていると思います。その点はどうお考えでしょうか?》
確かに、育児に参加しようとする男性が増えてきていることは事実でしょう。しかし、なぜわざわざ「イクメン」なんていう言葉を使うのでしょうか。それは、未だに「男性が育児に参加するのは特別なことである」という意識が残っているからだと考えられます。このような現状がある以上は、男性の育児参加が十分であるとは言えないでしょう。
他の原因として会社において産休や育休がとりにくいこと考えられます。日本では昔から、働くことが美学だと考えられてきました。したがって日本では慣例的に、有給休暇、出産休暇、育児休暇などがとりにくいです。このような状況下では、出産や育児で職場を離れた後復帰することに抵抗感を覚えて、出産を機に職をやめてしまうという女性も少なくありません。
この要因について質問はありますか?
《気まずさから女性が産休や育休をとりにくいということでしたが、これは女性が勇気を出してそれらの休暇を申請するしかないのでしょうか?》
それだけではないと思います。まずは誰もが有給休暇をとれるような雰囲気作り。これを会社単位や社会単位でする必要があると思います。そうすると、自ずと出産休暇や育児休暇もとりやすくなるでしょう。そうなると、女性のみならず男性も産休、育休をとることができるようなり、さらなる女性の社会進出に貢献できると考えられます。
まとめ。
女性の社会進出を抑制する要因について、私達は制度的側面、社会的側面、文化的側面から議論を行いました。制度的側面においては、女性の労働料を制限する配偶者控除や女性を雇いにくくする終身雇用制度が挙げられます。社会的側面においては、保育園が足りないことが挙げられます。育児をするのに保育園に頼れないため、離職せざるを得ません。文化的要因においては、男性が育児参加しないことや育休、産休がとれないことが挙げられます。
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政治学科
移民の受け入れを大幅に認めるべきかについて話し合っていきます。まず、移民を受け入れることによるメリットとデメリットを挙げます。次にメリットとデメリットを比較して移民の受け入れの是非を決めます。もし、移民を受け入れるべきであるという結論に至った場合は、日本が多民族国家としてのアイデンティティを強調していくべきかどうかについて話し合いましょう。
メリットについて。
経済成長ができることがメリットです。経済成長ができるという理由は2つあります。
1つ目は、人手不足による倒産を防げることです。現在、人口減少に伴い多くの企業が人手不足に陥っています。特に、飲食業、建設業、介護業などでは人手不足が常態化しています。人手不足の状態では、仕事を受注することができません。仕事を受注できないと利潤を増やすことができません。その結果、倒産に追い込まれてしまいます。これが人手不足による倒産です。このように企業が次々と倒産していく状態は経済にとっても負の影響を与えます。しかし、移民を受け入れることによって、それらの業界での人手不足解消をすることができます。これにより、人手不足による倒産を回避し、経済成長へとつなげることができます。
2つ目は、国内での消費が増えることです。一国の経済規模は人口に大きな影響を受けます。例えば、人口が100人で1人あたりの消費額が100円の国があるとします。この国の経済規模は「100*100」で1万円ということになります。もし、消費額がそのままで人口が200人に増えたとします。これで経済規模は「200*100」で2万円になります。このように、人口の増加は、国内での消費活動の増加に直結します。したがって、移民の受け入れによって経済成長が見込めます。
このメリットに対して質問や反対意見はありますか?
《1つ目の人手不足倒産に関して質問があります。現在、特に飲食業、建設業、介護業で人手不足とのお話でした。それらの職はいわゆる3K(きつい、汚い、危険)に分類される業界です。もし移民を受け入れたとしても、外国人がそれらの職に就くとは限らないのではないでしょうか?》
移民がそれらの職に就く可能性は十分にあると思います。移民の中には発展途上国から出稼ぎという目的で来る人もいます。そのような人にとっては、日本国内で低賃金とされる仕事も、自国と比べると高賃金です。実際、現在、技能実習生という形で、建設業や介護業などで働いている人も大勢います。このように、移民が日本の労働力不足を解消する可能性は十分にあります。
デメリットについて。
治安が悪化することがデメリットです。治安悪化の理由は2つあります。
1つ目は、文化摩擦による犯罪。日本人と外国人では、物事に対する考え方が異なります。例えば、日本においては時間を守ることは当たり前で、約束の時間の10分前に目的地に着くのは自然なことです。一方、諸外国においては約束の時間を過ぎるというのはごく一般的なことです。日本人からすると、そういった外国人の行動は理解ができない可能性があります。逆に外国人が日本人の行動で理解できないこともあります。このような相互不理解が積み重なって文化摩擦や犯罪に繋がってしまう恐れがあります。
2つ目は、外国人による犯罪が多いからです。日本は世界有数の治安が良い国です。相対的に外国は犯罪が多いことになります。したがって、移民を受け入れることによって日本国内における犯罪が増える可能性があります。
このデメリットに対して質問や反対意見はありますか?
《1つ目の文化摩擦について質問があります。確かに、移民の受け入れを始めてすぐは戸惑いや衝突が起こってしまうかもしれません。しかし、共生するうちにそのような問題は解決するのではないでしょうか?》
確かに文化摩擦は時間が経てば解決する可能性が十分にあると思います。
《続いて2つ目の外国人による犯罪について質問があります。前述のように、移民を受け入れてしばらく経つと、外国人も日本での暮らしに慣れ、文化を学んでいきます。その過程において、日本の治安に順応するという可能性はないのでしょうか?》
外国人が絶対に日本に順応できるという確証はありません。しかし、おっしゃるとおり、ある程度外国人が日本の治安に順応するということもあり得ると思います。
メリットとデメリットの比較をします。長期的な視点から見て、メリットがデメリットを上回っていると考えられます。デメリットに関しては、長期的な視点で見て、相互理解が進むことにより、犯罪という問題はそれほど起きそうにありません。一方メリットに関しては、長期的に見て重要視すべき問題です。なぜなら、少子高齢化が進むことにより、日本の人口はこれから減り続けます。この人口減少により人手不足倒産や消費の減少を防げます。したがって、長期的に見て経済成長に貢献することができます。結論として、メリットが大きいと判断できるため移民受け入れを大幅に拡大すべきだと思います。
続いて、日本が多民族国家としてのアイデンティティを強めていくべきかについて議論します。
多民族国家としてのアイデンティティを強めていくべきだと思います。なぜなら、移民を大幅に受け入れると宣言しつつも、多民族国家として機能していない国に行きたいと思う人は少ないからです。多民族国家としてのアイデンティティを強めていくことが移民の大幅に受け入れに直結すると考えられます。
私も多民族国家としてのアイデンティティは強めていくべきだと思います。しかし、それだけではなく、日本独自のアイデンティティも改めて大事にすべきです。日本には今まで受け継がれてきた文化や伝統があり、それらをないがしろにしていいわけはありません。日本の文化や伝統も大事にしつつ、多民族国家として歩むべきです。
■ディベートのコツ
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法律学科
議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回は、女性の社会進出が進まない原因について、3つの要因に分けながら議論しています。
それでは女性の社会進出が抑制される要因について話し合っていきます。設問にもある通り、要因は大きく3種類に分けられます。制度的要因、社会的要因、文化的要因の3つです。まずはそれぞれについて、どのような要因があるか列挙していきましょう。
問題発見及び論証→それぞれの側面から原因を挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。挙げられた原因の分析が浅いときは、原因の原因を突っ込んで、明らかにするようにしましょう。
保育園の数が足りていないことが原因と考えられます。待機児童問題などで明らかになっているように、保育園の需要に対して供給が追いついていません。出産した後、職場復帰したいと考えている女性がいたとしても、保育園に子供を預けられないため、育児のために職場復帰が叶わないです。
《なぜ保育園の数が足りないという問題が起きているのでしょうか?》
例えば、賃金が低いことや休みが少ないことなどが原因に挙げられます。
結論→議論したままで終わらず、議論のまとめをして自分たちの結論を最後まで述べるようにしましょう。
女性の社会進出を抑制する要因について、私達は制度的側面、社会的側面、文化的側面から議論を行いました。制度的側面においては、女性の労働料を制限する配偶者控除や女性を雇いにくくする終身雇用制度が挙げられます。社会的側面においては、保育園が足りないことが挙げられます。育児をするのに保育園に頼れないため、離職せざるを得ません。文化的要因においては、男性が育児参加しないことや育休、産休がとれないことが挙げられます。
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政治学科
議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回は、移民を受け入れるメリットとデメリットを比較します。
移民の受け入れを大幅に認めるべきかについて話し合っていきます。まず、移民を受け入れることによるメリットとデメリットを挙げます。次にメリットとデメリットを比較して移民の受け入れの是非を決めます。もし、移民を受け入れるべきであるという結論に至った場合は、日本が多民族国家としてのアイデンティティを強調していくべきかどうかについて話し合いましょう。
問題発見及び論証→それぞれの側面からメリットとデメリットを挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。提出された議論に関しては、前提条件を疑うことを心がけましょう。
経済成長ができることがメリットです。経済成長ができるという理由は2つあります。
1つ目は、人手不足による倒産を防げることです。現在、人口減少に伴い多くの企業が人手不足に陥っています。特に、飲食業、建設業、介護業などでは人手不足が常態化しています。人手不足の状態では、仕事を受注することができません。仕事を受注できないと利潤を増やすことができません。その結果、倒産に追い込まれてしまいます。これが人手不足による倒産です。このように企業が次々と倒産していく状態は経済にとっても負の影響を与えます。しかし、移民を受け入れることによって、それらの業界での人手不足解消をすることができます。これにより、人手不足による倒産を回避し、経済成長へとつなげることができます。
2つ目は、国内での消費が増えることです。一国の経済規模は人口に大きな影響を受けます。例えば、人口が100人で1人あたりの消費額が100円の国があるとします。この国の経済規模は「100*100」で1万円ということになります。もし、消費額がそのままで人口が200人に増えたとします。これで経済規模は「200*100」で2万円になります。このように、人口の増加は、国内での消費活動の増加に直結します。したがって、移民の受け入れによって経済成長が見込めます。
このメリットに対して質問や反対意見はありますか?
《1つ目の人手不足倒産に関して質問があります。現在、特に飲食業、建設業、介護業で人手不足とのお話でした。それらの職はいわゆる3K(きつい、汚い、危険)に分類される業界です。もし移民を受け入れたとしても、外国人がそれらの職に就くとは限らないのではないでしょうか?》
移民がそれらの職に就く可能性は十分にあると思います。移民の中には発展途上国から出稼ぎという目的で来る人もいます。そのような人にとっては、日本国内で低賃金とされる仕事も、自国と比べると高賃金です。実際、現在、技能実習生という形で、建設業や介護業などで働いている人も大勢います。このように、移民が日本の労働力不足を解消する可能性は十分にあります。
結論→今回のように政策の是非を問われたときは、最後にメリットとデメリットを比較しましょう。
メリットとデメリットの比較をします。長期的な視点から見て、メリットがデメリットを上回っていると考えられます。デメリットに関しては、長期的な視点で見て、相互理解が進むことにより、犯罪という問題はそれほど起きそうにありません。一方メリットに関しては、長期的に見て重要視すべき問題です。なぜなら、少子高齢化が進むことにより、日本の人口はこれから減り続けます。この人口減少により人手不足倒産や消費の減少を防げます。したがって、長期的に見て経済成長に貢献することができます。結論として、メリットが大きいと判断できるため移民受け入れを大幅に拡大すべきだと思います。
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