慶應義塾大学 法学部 FIT入試 A方式 2014年 グループ討論  議論の流れと対策

 

■設問

テーマ(法律学科):
『「嘘も方便」といわれます。他方、嘘は泥棒の始まりともいわれます。つまり、時と場合によっては嘘が必要なときもあるという考え方もあれば、嘘をつくことはどのような場合も許されないという立場もあります。これらの主張の是非について、自由に議論してください。』
                

テーマ(政治学科):
『最近、日本について” Leaderless Japan “と表現した海外メディアがありました。日本のリーダーの現状と問題はどのようなものでしょうか。今後の日本のリーダーのあり方を含め自由に議論してください。』

■想定される議論の流れ

・法律学科

それでは嘘をつくことの是非について話し合っていきます。議論の流れとして、嘘をつくことによるメリットとデメリットを挙げます。その後、メリットとデメリットを比較して結論を出します。

メリットについて。
「嘘も方便」ということわざに代表されるように、嘘をつくことで善行をつむことができます。このことわざの元になったのは以下のような話です。ある老人の家で火事が起き、その中で子どもたちが遊んでいました。老人が「危ないから逃げなさい」と言っても子どもたちが聞く耳を持たなかったため、「外に出ればお前たちが欲しがっていた羊の車、鹿の車、牛の車がある」という嘘をついて子どもたちを外に連れ出すことに成功しました。このように嘘をつくことで良い結果をもたらすことができます。
このメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《今回のケースのように、緊急性がある場合は嘘をつくことで良いことが得られるということは理解できます。しかし、緊急性がない場合は嘘をつく必要はないと思います。例えば、子供の教育をする上で「野菜もちゃんと食べないと大きくなれない」という嘘をつく人は一定数いると思います。しかし、このような例に関しては、嘘をつかなくても、野菜の重要性を説くことや野菜の美味しい食べ方を考案することで解決できます。以上のような緊急性がない場合に関してはどう思われますか?》
緊急性がある場合は、確実に嘘は必要だと思います。緊急性がない場合は、指摘いただいたとおり、一考の余地があるかと思います。

デメリットについて。
嘘をつくことで他人からの信頼を失ってしまうことがデメリットです。嘘をつくことは他人からの気持ちを踏みにじることにつながってしまいます。具体例としてオオカミ少年を挙げます。オオカミ少年では、周りからの注意を引きたい少年が「オオカミが来た」と村の人に嘘をつき続けていました。いつも嘘をついているので、村の人は少年の言葉を信じなくなりました。ある日、本当にオオカミが来たため、少年は慌てて村の人にオオカミが来た旨を伝えましたが、誰も信じてくれませんでした。その結果、村の人はオオカミに食べられてしまいました。このように嘘をつくことは周りからの信頼を失ってしまうことにつながってしまいます。その結果、自分だけではなく周りの人にまで被害が及ぶ可能性があります。このような事態を避けるためにも嘘をつくべきではありません。
このデメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《オオカミ少年の例では何度も嘘をつき続けたので信頼を失ってしまったとのことでした。一度や二度の嘘ではそのような状況にはならないのではないでしょうか?》
たった一度の嘘でも信頼を失うことは十分にありえます。自分が心から信頼している人がたった一つでも嘘をついていたら、その人に対して大なり小なり猜疑心がわきます。そのような猜疑心がある状況では、いつだって信頼を失う可能性があります。

メリットとデメリットを比較していきます。緊急性があるような場合では、メリットがデメリットを上回ります。緊急性がある場合には、命などに関わる重大な場合などがあります。そのような状況では、もちろん嘘をついてでも危険を回避すべきです。また、そのような嘘では信頼を失う可能性はありません。一方で、緊急性がないような場合では、デメリットがメリットを上回ります。緊急性がないということは、わざわざ嘘をつかなくても相手を説得することは可能です。そのような状況下で嘘をつくことは、相手からの信頼を失うことに繋がりかねません。
結論として、嘘をつくべきかどうかはケースバイケースです。基本的に嘘は信頼を失う可能性があるのでつくべきではありません。しかし、誰かに危害が及ぶなど、緊急性が高い場合においては、嘘をつくべきだと言えます。

・政治学科

それでは日本のリーダーのあるべき姿について話し合っていきます。議論の流れとして、1番目に現状のリーダーの問題点を列挙します。2番目にその背景について論じます。3番目に問題点の解決方法を述べます。4番目に総括を行います。

1番目の問題点について論じます。大きく分けて2つの問題があります。1つ目の問題は、自分の意見をしっかりと主張できないことです。リーダーの素質として必要なものとして、人前に立って発言する勇気や図々しさが挙げられます。しかし、日本においては「出る杭は打たれる」、「空気を読む」などの言葉に代表されるように、周りとの調和を大切にする文化があります。確かに周りとの調和は大切ですが、リーダーが自分の意見を述べられず、周りに合わせていては何も決めることができません。これでは、何も決められない意志力の弱いリーダーしか生まれません。2つ目の問題は、失敗を恐れていることです。日本人は「失敗は悪いこと」という考えを持っていることが多いです。失敗に対しての恐怖心があるため、失敗しないように現状維持などの保守的な行動しか取ることができません。もちろん、組織において、変化が必要なときもあります。しかし、リーダーが変化による失敗を恐れている状況においては、必要な変化ができません。

2番目の背景について論じます。以上のような問題がある背景として、日本教育が挙げられます。まず、1つ目の問題である意見を主張できないについてです。海外では、個人主義が教育の本質であり、自由な考えや発想が重視されます。一方、日本では集団主義が教育の本質であります。いくつもの細やかなルールによって子供を縛り、皆が同じような行動をするように強いています。もし、周りと違うような行動をすれば注意を受けます。このような環境下で育つ日本人は、自分の意見を言わず、周りの顔色を伺うことが美徳であると考えるようになります。このような状況では、自分の意見をしっかり主張できるリーダーが生まれてなくて当然です。続いて、2つ目の問題である失敗についてです。これは1つ目の問題の背景とかなり近いです。日本の教育では、皆一緒であることが求められます。また、問題の解答も一つに定まることが多いです。具体例を挙げます。算数の計算問題で、「2+4=□」などのように解答が空欄になっている問題は日本において一般的です。これは一つの答えを追い求めることを重視しています。しかし、海外においては、「□+□=6」などのように、過程が空欄になっている問題が一般的です。これは生徒の自由な発想を重視しています。この例のように、小さいときから周りと同じであることを求められ、違うことを悪だとされます。このような状況下では、失敗することを恐れるようになって当然です。

3番目の解決策について論じます。2番目の背景の部分で述べたように、この原因は日本教育にあります。もっと具体的に言うと、集団主義を尊重しすぎていることが原因です。もちろん、集団主義にも良いところはありますが、次世代を担うようなリーダーが生まれないという問題を鑑みたとき、集団主義には限界が感じられます。したがって、日本教育も、海外教育のような個人主義に切り替えるべきです。具体的には、教育において違いを認めることや失敗を経験させるなどです。違いを認めるというのは、答えのない問いを与えることです。失敗を経験させるというのは、間違ってもそれを受容するような空気を作り上げるということです。

4番目の総括に移ります。日本のリーダーの問題点は、意見が主張できないことと失敗を恐れて変化を避ける傾向にあることです。組織を良くするためには、自らの意見をしっかりと主張し、失敗を恐れずに挑戦するリーダーが必要です。それらの理想像に近づけるために、日本の教育の仕方を変えるべきです。具体的には、皆が均一であることが求められる集団主義から、個人個人の考えが尊重される個人主義の教育へと切り替えるべきです。

■ディベートのコツ

・法律学科

議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回の場合、嘘をつくことのメリットとデメリットについて論じます。

それでは嘘をつくことの是非について話し合っていきます。議論の流れとして、嘘をつくことによるメリットとデメリットを挙げます。その後、メリットとデメリットを比較して結論を出します。

問題発見及び論証→それぞれの側面から原因を挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。前提条件についてしっかりと確認するようにしましょう。

「嘘も方便」ということわざに代表されるように、嘘をつくことで善行をつむことができます。このことわざの元になったのは以下のような話です。ある老人の家で火事が起き、その中で子どもたちが遊んでいました。老人が「危ないから逃げなさい」と言っても子どもたちが聞く耳を持たなかったため、「外に出ればお前たちが欲しがっていた羊の車、鹿の車、牛の車がある」という嘘をついて子どもたちを外に連れ出すことに成功しました。このように嘘をつくことで良い結果をもたらすことができます。
このメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《今回のケースのように、緊急性がある場合は嘘をつくことで良いことが得られるということは理解できます。しかし、緊急性がない場合は嘘をつく必要はないと思います。例えば、子供の教育をする上で「野菜もちゃんと食べないと大きくなれない」という嘘をつく人は一定数いると思います。しかし、このような例に関しては、嘘をつかなくても、野菜の重要性を説くことや野菜の美味しい食べ方を考案することで解決できます。以上のような緊急性がない場合に関してはどう思われますか?》
緊急性がある場合は、確実に嘘は必要だと思います。緊急性がない場合は、指摘いただいたとおり、一考の余地があるかと思います。

結論→今回のように主張の是非を問われたときは、最後にメリットとデメリットを比較しましょう。

メリットとデメリットを比較していきます。緊急性があるような場合では、メリットがデメリットを上回ります。緊急性がある場合には、命などに関わる重大な場合などがあります。そのような状況では、もちろん嘘をついてでも危険を回避すべきです。また、そのような嘘では信頼を失う可能性はありません。一方で、緊急性がないような場合では、デメリットがメリットを上回ります。緊急性がないということは、わざわざ嘘をつかなくても相手を説得することは可能です。そのような状況下で嘘をつくことは、相手からの信頼を失うことに繋がりかねません。

・政治学科

議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回の場合、リーダーについて論じます。

それでは日本のリーダーのあるべき姿について話し合っていきます。議論の流れとして、1番目に現状のリーダーの問題点を列挙します。2番目にその背景について論じます。3番目に問題点の解決方法を述べます。4番目に総括を行います。

問題発見及び論証→それぞれの側面から原因を挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。

2番目の背景について論じます。以上のような問題がある背景として、日本教育が挙げられます。まず、1つ目の問題である意見を主張できないについてです。海外では、個人主義が教育の本質であり、自由な考えや発想が重視されます。一方、日本では集団主義が教育の本質であります。いくつもの細やかなルールによって子供を縛り、皆が同じような行動をするように強いています。もし、周りと違うような行動をすれば注意を受けます。このような環境下で育つ日本人は、自分の意見を言わず、周りの顔色を伺うことが美徳であると考えるようになります。このような状況では、自分の意見をしっかり主張できるリーダーが生まれてなくて当然です。続いて、2つ目の問題である失敗についてです。これは1つ目の問題の背景とかなり近いです。日本の教育では、皆一緒であることが求められます。また、問題の解答も一つに定まることが多いです。具体例を挙げます。算数の計算問題で、「2+4=□」などのように解答が空欄になっている問題は日本において一般的です。これは一つの答えを追い求めることを重視しています。しかし、海外においては、「□+□=6」などのように、過程が空欄になっている問題が一般的です。これは生徒の自由な発想を重視しています。この例のように、小さいときから周りと同じであることを求められ、違うことを悪だとされます。このような状況下では、失敗することを恐れるようになって当然です。

結論→議論が錯綜したまま終わらないように総括を行います。

4番目の総括に移ります。日本のリーダーの問題点は、意見が主張できないことと失敗を恐れて変化を避ける傾向にあることです。組織を良くするためには、自らの意見をしっかりと主張し、失敗を恐れずに挑戦するリーダーが必要です。それらの理想像に近づけるために、日本の教育の仕方を変えるべきです。具体的には、皆が均一であることが求められる集団主義から、個人個人の考えが尊重される個人主義の教育へと切り替えるべきです。

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