慶應義塾大学 法学部 FIT入試 A方式 2017年 グループ討論  議論の流れと対策

■設問

グループ討論の概要
・テーマ(法律学科):
今年から、選挙権が18歳に引き下げられました。これを受けて、一部の高校では、高校生の学外での政治活動について、学校への「事前届け出」を義務付ける制度が導入されました。生徒の選挙運動等は、学校の教育目的の観点から一定の範囲内で制約を受ける必要があるというのが、導入した学校側の考えです。一方で、この制度は、高校生を萎縮させるおそれがあり、政治集会等へ参加することをためらう生徒も出てくるであろうという指摘もあります。このような「事前届け出」制の是非について、自由に議論してください。

・テーマ(政治学科):
社会経済現象の基礎には人口があります。人口の規模・構造・地域分布とそれらの変化は一国の社会経済政策に影響をあたえます。その逆も成立し、社会経済政策が人口のあり方を規定することもあります。日本では人口減少が2005年から始まっています。人口減少が日本社会にもたらしている影響を踏まえながら、どのような政策が望ましいか、自由に議論してください。

■想定される議論の流れ

・法律学科

それでは「事前届け出」の是非について話し合っていきます。初めに前提条件の確認をします。「事前届け出」とは、高校生の学外での政治活動について学校に事前報告するものです。議論の流れとして、まず事前届け出制度によるメリットとデメリットを挙げます。次にメリットとデメリットを比較して事前届け出制度の是非を決めます。

メリットについて。
学校が生徒の政治活動をしっかりと管理できることがメリットです。学校教育において、子供が道を踏み外さないようにするのも教師の役割です。まだ精神的にも未熟な高校生のうちから政治活動に参加することは、危険が伴います。特に、過激な政治活動などに参加することで危険に巻き込まれる可能性もあります。もし事前届け出制度があれば、生徒の政治活動を管理することができ、そのような危険から守ることができます。
このメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《なぜ政治活動に参加することが危険なのでしょうか?》
高校生は精神的に未熟であり、物事の善悪がつけられない時期です。そのような中、デモなどの過激な政治活動などにのめり込んでしまうと、その後の人生に影響がでかねません。そのようなリスクを排除するためにも、事前届け出制度を用いて、生徒の政治活動を管理する必要があります。

デメリットについて。
憲法で保証されている思想の自由や表現の自由が侵されることがデメリットです。本来、誰であり自由に政治活動に参加することが可能です。しかし、事前届け出の存在が、政治活動への参加を妨げてしまう恐れがあります。なぜなら、事前届け出をしなければならないことで、政治活動への参加を萎縮してしまうからです。仮に萎縮せずに事前届け出を提出できたとしても、教師が「危険だから」という理由で生徒の政治活動への参加を拒否してしまうかもしれません。これでは選挙権を引き下げた意味がありません。したがって、事前届け出制度は必要ありません。
このデメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《なぜ事前届け出があると生徒が政治活動への参加を萎縮してしまうのでしょうか?》
事前届け出のせいで生徒は自らの政治的な考えを開示する必要があります。また、開示した後に教師から否定される可能性もあります。そのようなリスクを考えたとき、生徒はそもそも政治活動への参加を萎縮していまいます。

メリットとデメリットの比較の前に、日本の政治における前提条件を確認します。日本の政治は間接民主制となっています。これは、民意を正しく反映した上で政治を動かしていくというものです。民意を正しく反映する上で重要なのが、日本国憲法です。日本は立憲主義国家であり、憲法は守られるべき最高法規です。思想の自由、表現の自由、言論の自由などが憲法で守られています。したがって、国民が考えたままの意見が、政治に反映されるのが、日本における政治の正しいあり方ということになります。

以上の点を踏まえたうえで、メリットとデメリットを比較していきます。メリットは学校が生徒の政治活動を管理し危険から守ることです。デメリットは生徒の政治活動の自由が奪われることです。メリットで述べられていたように、生徒が危険に巻き込まれるリスクは避けるべきです。しかし、そのような政治活動への参加を含めて、自由が憲法により保証されています。つまり、日本の政治のあり方を考慮すると、メリットはそれほど重要なものではありません。したがって、デメリットのほうがメリットより重要であり、事前届け出制度は廃止されるべきです。

・政治学科

それでは人口減少を踏まえたうえで、どのような政策が日本に必要かについて話し合っていきます。議論の流れとして、1番目に人口減少が日本社会にもたらしている影響を挙げます。2番目に人口減少の原因を分析します。3番目にそれらの問題点を踏まえたうえで、どのような政策を導入するべきかを議論します。4番目にそれらの政策の中でどれが一番優れているかを比較検討します。

1番目に人口減少が日本社会にもたらしている影響について論じます。
大きな影響は経済の衰退です。経済衰退の理由は2つあります。1つ目は人手不足による倒産が起きてしまうことです。現在、人口減少に伴い多くの企業が人手不足に陥っています。3K(きつい、汚い、危険)などと揶揄されることのある飲食業、建設業、介護業などでは人手不足が常態化しています。人手不足が深刻化してしまうと仕事を受注することができません。仕事を受注できないと利潤をあげることができません。その結果、倒産に追い込まれてしまいます。これが人手不足倒産です。このように企業が次々に倒産していく状況は、日本の経済にとっても好ましくありません。2つ目は国内での消費が減ることです。一国の経済規模は人口に大きな影響を受けます。例えば、人口が200人で1人あたりの消費額が100円の国があるとします。この国の経済規模は「200*100」で2万円ということになります。もし、消費額がそのままで人口が100人に減ったとします。これで経済規模は「100*100」で1万円になります。このように、人口の減少は、国内での消費活動の減少に直結してしまいます。
このような経済の衰退は、国民の生活に直接的な影響を与えるだけではなく、間接的な影響を与えます。それは社会保障への影響です。経済が停滞するということは、その分だけ、国家が得られる税収が少なくなることに繋がります。これにより、少子高齢化によりただでさえ厳しいとされている社会保障に悪影響が出ることは間違いありません。したがって、人口減少による経済の問題は無視することができない重要な問題です。

2番目に人口減少の原因について論じます。
2つの原因が考えられます。1つ目は出産や育児がしにくい環境です。出産休暇や育児休暇などの制度があることは事実ですが、それらの休暇がとりにくいのもまた事実です。日本において、「働くことは美徳であり、働かないことは悪である」という考えを持っている人は少なくありません。例えば、有給休暇一つをとってみても、日本は諸外国よりも取得率が低いです。このような環境下では、出産休暇や育児休暇が取りにくくて当たり前です。その結果、出産や育児を考えている女性は「仕事を続けるか、辞めるか」の選択を迫られてしまいます。2つ目は人口の東京一極集中です。現在の日本では、「ヒト、モノ、カネ」は東京に集まっています。良い教育を得たい、良い雇用を得たいという思いから上京する若者が多くいます。しかし、東京は結婚し、子供を生み、子供を育てるのに適した環境とは言えません。なぜなら、家賃などを含めた物価がかなり高いからです。

3番目にどのような政策の導入するべきかを論じます。ここでは、それぞれの原因に対してどのような政策がとられるべきかを挙げます。
1つ目の原因に対してとれる政策として、企業の出産休暇取得率や育児休暇取得率が高い企業に対して政府から補助金を出すというものです。企業側としては、出産休暇や育児休暇は収益に対して負の影響しか与えません。そこで、この負の影響を打ち消せるように補助金を出すことによって、企業側が出産や育児に対して積極的になります。
2つ目の原因に対してとれる政策として、地方創生を進めるというものです。そもそも東京への一極集中が進んでしまう背景としては、教育や雇用が東京に集まっていることが挙げられます。そこで、政府からの補助金や地方分権を推し進めていくことによって、地方都市の魅力を上げる必要があります。

4番目にこの2つの政策の中でどちらの政策が望ましいかを論じます。
1つ目の出産休暇や育児休暇に対する補助金は、効果が懐疑的です。なぜなら、休暇がとりにくい一番の理由は「働くことは美徳であり、働かないことは悪である」という雰囲気が流れていることだからです。つまり、補助金があって会社が休暇を奨励したとしても、社会の雰囲気が変わらない限り、出産休暇や育児休暇はとりにくいという事実は変わらないということです。したがって、この政策が人口減少に対する政策としてうまく機能するかは不明です。一方、2つ目の地方創生に関して、例えば、「地方国立大学に行く成績優秀者には給付型の奨学金をあげる」や「地方に企業を誘致し、代わりに法人税を減額する」などの政策は、人々のモチベーションにダイレクトに働きかけることができます。したがって、日本の人口減少に対して、地方創生を推し進めていくべきです。

■ディベートのコツ

議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回の場合、事前届け出制度のメリットとデメリットについて論じます。

それでは「事前届け出」の是非について話し合っていきます。初めに前提条件の確認をします。「事前届け出」とは、高校生の学外での政治活動について学校に事前報告するものです。議論の流れとして、まず事前届け出制度によるメリットとデメリットを挙げます。次にメリットとデメリットを比較して事前届け出制度の是非を決めます。

問題発見及び論証→それぞれの側面から原因を挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。前提条件についてしっかりと確認するようにしましょう。

メリットについて。学校が生徒の政治活動をしっかりと管理できることがメリットです。学校教育において、子供が道を踏み外さないようにするのも教師の役割です。まだ精神的にも未熟な高校生のうちから政治活動に参加することは、危険が伴います。特に、過激な政治活動などに参加することで危険に巻き込まれる可能性もあります。もし事前届け出制度があれば、生徒の政治活動を管理することができ、そのような危険から守ることができます。
このメリットについて、質問や反対意見はありますか。
《なぜ政治活動に参加することが危険なのでしょうか?》
高校生は精神的に未熟であり、物事の善悪がつけられない時期です。そのような中、デモなどの過激な政治活動などにのめり込んでしまうと、その後の人生に影響がでかねません。そのようなリスクを排除するためにも、事前届け出制度を用いて、生徒の政治活動を管理する必要があります。

結論→今回のように政策の是非を問われたときは、最後にメリットとデメリットを比較しましょう。

以上の点を踏まえたうえで、メリットとデメリットを比較していきます。メリットは学校が生徒の政治活動を管理し危険から守ることです。デメリットは生徒の政治活動の自由が奪われることです。メリットで述べられていたように、生徒が危険に巻き込まれるリスクは避けるべきです。しかし、そのような政治活動への参加を含めて、自由が憲法により保証されています。つまり、日本の政治のあり方を考慮すると、メリットはそれほど重要なものではありません。したがって、デメリットのほうがメリットより重要であり、事前届け出制度は廃止されるべきです。

・政治学科

議論の整理→議論が錯綜しないように、「何について話し合うのか」、「どのように話し合うのか」を定める必要があります。今回の場合、人口減少に対しての政策について論じます。

それでは人口減少を踏まえたうえで、どのような政策が日本に必要かについて話し合っていきます。議論の流れとして、1番目に人口減少が日本社会にもたらしている影響を挙げます。2番目に人口減少の原因を分析します。3番目にそれらの問題点を踏まえたうえで、どのような政策を導入するべきかを議論します。4番目にそれらの政策の中でどれが一番優れているかを比較検討します。

問題発見及び論証→それぞれの側面から原因を挙げていきます。意見を主張するときは、その意見の根拠や背景についても触れるようにします。前提条件についてしっかりと確認するようにしましょう。

2番目に人口減少の原因について論じます。
2つの原因が考えられます。1つ目は出産や育児がしにくい環境です。出産休暇や育児休暇などの制度があることは事実ですが、それらの休暇がとりにくいのもまた事実です。日本において、「働くことは美徳であり、働かないことは悪である」という考えを持っている人は少なくありません。例えば、有給休暇一つをとってみても、日本は諸外国よりも取得率が低いです。このような環境下では、出産休暇や育児休暇が取りにくくて当たり前です。その結果、出産や育児を考えている女性は「仕事を続けるか、辞めるか」の選択を迫られてしまいます。2つ目は人口の東京一極集中です。現在の日本では、「ヒト、モノ、カネ」は東京に集まっています。良い教育を得たい、良い雇用を得たいという思いから上京する若者が多くいます。しかし、東京は結婚し、子供を生み、子供を育てるのに適した環境とは言えません。なぜなら、家賃などを含めた物価がかなり高いからです。

結論→今回のように政策の望ましさについて問われたときは、どの政策をとるべきか結論を示します。

4番目にこの2つの政策の中でどちらの政策が望ましいかを論じます。
1つ目の出産休暇や育児休暇に対する補助金は、効果が懐疑的です。なぜなら、休暇がとりにくい一番の理由は「働くことは美徳であり、働かないことは悪である」という雰囲気が流れていることだからです。つまり、補助金があって会社が休暇を奨励したとしても、社会の雰囲気が変わらない限り、出産休暇や育児休暇はとりにくいという事実は変わらないということです。したがって、この政策が人口減少に対する政策としてうまく機能するかは不明です。一方、2つ目の地方創生に関して、例えば、「地方国立大学に行く成績優秀者には給付型の奨学金をあげる」や「地方に企業を誘致し、代わりに法人税を減額する」などの政策は、人々のモチベーションにダイレクトに働きかけることができます。したがって、日本の人口減少に対して、地方創生を推し進めていくべきです。

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