■議論の整理・・・
社会や自然環境と良好な関係を保たなければ、企業そのものが成長できない。そのような考えから「企業の社会的責任(CRS)」という発想が生まれた。近年、利益を追求するだけではなく、その利益を社会貢献活動や環境問題に還元する取り組みを進める企業が増えている。しかしながら、論文※1によると、企業の部署を横断する業務を担うCRS活動は、適切な役割や権限が与えられない限り、組織のなかで機能しない。そのためCRS活動を立ち上げても形式的な取り組みに終わる傾向がある。
■問題発見・・・
「企業の社会的責任(CRS)」という言葉だけ聞くと、企業の利益活動以外のボランティアと見なされ、積極的な理解が得られない。そこで、論文※1が指摘するように、イノベーションを生み出すビジネスモデルを構築する必要があるのではないか。
■論証・・・
CRS活動を、企業活動のなかに効果的に位置づけるためには、部署横断型の協力体制や社外組織との連携を深めていくことが必須である。たとえば、自動車メーカーが二酸化炭素排出削減に取り組む場合、研究開発、製造、営業などの部署が連携することで、目標達成と社会発信が実現される。しかしながら、CRS活動が社会や企業に与えた効果を客観的に示さなければ、社内で理解を得続けることは難しい。そのため、部署が垣根を越えて共有できる、効果測定の指標を構築する必要がある。
■結論・・・
大企業になればなるほど、部署の垣根を越えてプロジェクトに取り組むことが難しくなる。そこで私は、CRS活動の効果を客観的に示す測定方法を提案する。それにより、部署の垣根を越えてイノベーションを生み出す環境整備に役立てたい。
■結論の吟味・・・
私は、CRS活動の環境整備を進めるためには国際的な連携が必要だと考えている。谷本寛治教授は、企業と社会の関係やソーシャルイノベーション創出のあり方について、日本のみならず海外の研究者とも共同研究を進めている。そこで私は谷本寛治ゼミに参加することを希望するに至った。
論文※1谷本寛治(2017)「企業と社会のガバナンス構造の変化」『経営学論集』第87集(日本経営学会)
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