■議論の整理・・・
近年、インターネット・バンキングを利用している人のIDやパスワードを盗んで、預金を不正に送金するサイバー犯罪が多発している。2019年の不正送金の被害が、過去最悪の水準に達していることが警察庁により公表された。不正の方法は、フィッシングメールによる偽サイトへの誘導のほか、スパイウェアなど不正プログラムを用いた方法も多発している。現状、パスワードを他人に知られたなど、利用者に過失があった場合は、利用者の責任も問われる。そうでない場合は、銀行が全額を補償するかたちとなっている。
■問題発見・・・
しかしながら、インターネット・バンキングは、通常の銀行よりも管理が難しく、不正送金の手法が高度化しているため、一般的な銀行とは事情が異なる。そこで原則、すべての被害の補償を銀行が行うことになった。今後、IT技術が進展するにつれて、銀行の責任の範囲が変容し、責任の所在があいまいになるのではないか。
■論証・・・
論文※1では、盗難によるキャッシュカードの不正利用に関する判例を整理し、利用者と金融機関の過失の範囲を、複数の説を比較しながら検討している。インターネット・バンキングは、一般的な銀行と比較すると手間が少なく、即時の出入金ができるため、ネット売買や投資を促進する役割を果たした。同時にインターネット・バンキングを利用した不正送金被害の判例も増加している。
■結論・・・
それらを整理して、これから変容するだろう責任の範囲を議論する土壌を構築する必要がある。そこで私は、実際の判例を分析し、利用者と銀行の責任の範囲が、どのように問われているのか明らかにする。
■結論の吟味・・・
そこで私は、判例分析をベースに、金融機関の責任の範囲を研究している、新井剛ゼミに所属することを希望する。
論文※1新井剛(2011)「《判例研究》詐取された再発行カードによる預金払戻しと預貯金者保護法・再論 : 大阪地判平成20年4月17日判例時報2006号87頁」『獨協法学』83号(獨協大学)
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