慶應義塾大学 経済学部 1982年度 小論文模範解答
議論の整理……
問題発見……
論証……
解決策or結論・結果……
解決策or結論・結果の吟味……
日本が、当時の中国や朝鮮半島と同じく、海外との接触を拒み、戦略のない努力を正当化する背景には、日中韓三国が共通して持つ儒教的価値観が大きく影響している。
儒教的な価値観は、長幼の礼を重んじる。これはつまり、意見自体の知的な正しさを批判的に検証することよりもむしろ、その意見の持ち主が年上であるか年下であるか、地位が上か下かを重んじる考え方である。こうした半知性的な態度で、問題解決に臨んでいると必ずと言ってよいほど失敗する。なぜなら、こうした問題の解決過程に焦点を絞っていない解決策or結論には、必ずと言っていいほど必要な資源の試算漏れが存在するからである。こうした欠陥が実行段階での無理と無駄を生み、結局儒教的価値観に基いて立案された計画の実行は滞るのである。
現在の中国や韓国がこうした儒教的価値観を克服できた理由は、両国が抱えてきた困難な歴史にある。たとえば、中国は文化大革命により年長者の知識人が皆無となったため、若い世代が意思決定の中枢を担うことができている。また韓国についても、金融危機があったため、同じように若い世代が活躍できる土壌が整っている。一方、この時期をバブル経済の中で両国と比べると大過なく過ごした日本企業では、未だに年長者が意思決定権を握っており、彼らの意思決定は往々にして思いつきに終始しており、計画実行に必要な資源を試算しておらず、座礁することが多い。
このように、福澤の脱亜論は、現在においては中国や韓国に対してよりも、むしろ日本のあり方について重要な示唆をもたらす。ニーチェは「深淵を覗きこむものはまた……」という箴言を残しているが、今日の日本の問題解決には、中国や韓国の歴史上の失敗から学ぶべき点も多い。
コメントを残す