順天堂大学 医学部 2015年 小論文 解答例

2015年度 順天堂大学

・議論の整理

キングスクロス駅の階段の左側を、黒いコートを着た男が昇っている。階段の右側の手すりには赤い風船が二つ浮かんでいるが、男は自らの手元だけを見つめて階段を昇っていたので、風船の存在に気が付かなかったのかもしれない。

・問題発見

自分の手元に気を取られて駅に似つかわしくない赤い風船という特別な存在に気が付くことのできなかった男の様子に、私は病の徴候を見逃してしまう人間の様子を連想した。

・論証

自分が風邪を引いたときのことを考えても、病気のきっかけは、少し喉が痛いといったような些細なものから始まることが多いのではないかと思う。その些細な違和感は、目の前の仕事だったり、趣味であったりに没頭している間は自分でも気が付きにくいもので、その後病状が重くなってきたときになってはじめて存在に気が付く程度のものだ。自らの体の不調に気が付くためには、作業を中断して、自分の心と体に向き合う時間が必要である。しかし、現代人はいつもスマートフォンを握りしめ、イヤフォンを装着し、情報を取り入れるのに暇がない。

・結論、結論の吟味

そんな忙しい現代人の心身の異常を、例えそれに本人も気が付いていなかったとしても、早くから発見する必要があるのが医師の役目である。かかりつけの患者が来院したとき、患者が普段と比べて元気がないように見えたら、「最近困っていることはありますか?」とさりげなく聞いてみたり、病棟に入院中の患者が少し怠そうにしていたときに、血液検査の結果を確認して感染の徴候にいち早く気が付いたりと、患者の様子に気を配り、違和感を発見して対処する必要があるのだ。徴候を見逃さないためには、医師自身がこのキングスクロスの男のように手元の作業に気を取られていてはいけない。医師はカルテの記載や薬の処方など雑務に忙殺されているが、患者の示す些細な徴候を見逃さないためには、患者と相対するときはいったんそれらの仕事を脇に置き、患者の診察に集中する必要がある。(796字)

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