小論文第一段階 「一文一文の書き方」

「小論文はセンスじゃない。」

これが慶應小論文について私が書いた本のタイトルである。私は小論文指導に携わってもうすぐ7年目になるが、小論文はセンスではなく確かな方法論に基づいて執筆されるべきだという指導方針への確信はますます強くなっている。

私が小論文はセンスではない、という確信を深める背景には、本場アメリカではレポートの書き方がかなり定型化されているためである。日本でも「MBAクリティカル・シンキング」や「読む技術・書く技術」というアメリカ発のこうした書籍が話題になっているが、こうした書籍に共通する文章作法としては、論理的思考法や文章作法を定型化し、誰でも使えるものにした上で、個々の人間観に基づく思索を引き出そうとする姿勢である。そうした姿勢が、個々人の尊厳を至高のものとして扱う欧米型の健全な個人主義を支え、自らの尊厳のみを最上のものとする感情的な利己主義・自己中心主義を排除してきたと私は考えている。

私はこうした健全な個人主義を日本社会に浸透させるためにもも、欧米風のこうした文章作法を広げたいと考えている。また、慶應義塾大学の先生方とも軌を一にしたのか、近年ではこうした欧米型の文章作法に基づく問題文中の指示もまた多くなってきている。私は、こうした大学側からの要請も背景にしながら、感覚や感情に依ってではなく、論理と人間観による小論文執筆を手助けしたいと考えている。

■ 小論文 第一段階 「一文一文の書き方」(1日目・1日2時間)

これを習得するためには小論文の基本的な文法ドリルが独自教材であるので、そちらのドリルを演習していただく形になる。また、「論理力トレーニング101題」も必修で行う。

0. 一文一文の書き方について議論する理由

小論文の論理を云々する前に、一文一文の書き方が極めて稚拙であるケースが多い。

読みにくい文章の代表例としては、
・ 論理関係が不明瞭な文章
・ 主語と動詞の関係が不明瞭な文章
・ 修飾関係が不明瞭な文章

の三つが挙げられる。

1. 論理的関係が不明瞭になる原因

まず、論理的な関係が不明瞭になる原因についてだが、これは文中に接続詞を用いない姿勢から生まれる。文章を書く時は、段落の冒頭の文章を除いては必ず接続詞を付けることを原則とすべきである。できうる限り、根拠を示す接続詞である「なぜなら」・具体例を示す接続詞である「たとえば」は付けるようにしたほうが良い。その上で順接にせよ逆接にせよ、文章の論理関係に応じた接続詞を段落冒頭の文章を除いては付けるべきだろう。

2. 主語と動詞の関係が不明瞭になる原因

次に、主語と動詞の関係が不明瞭になる原因についてだが、これは一文に二つ以上の節を入れることから生じる。

そもそもこの事について説明する前に句と節について振り返ってみると、節というのは主語と動詞の固まりのことである。句というのは、主語か動詞を伴わない言葉の固まりと考えれば良い。

たとえば、

 雨が振ったので(句)、私は傘をさした。(節)

である。雨を降らせたのは空中の水蒸気と気候の変化だが、空中の水蒸気と気候の変化という主語はここでは省略されているため、「雨が振ったので」という語句は句であると判断することが正しい。一方で、私は傘をさした、という表現には主語と動詞が存在するため、これは節である。

次に、

 太郎君は傘をさしたので(節)、私も傘をさすことにしたが(節)、花子ちゃんはそうしなかった(節)。

ここで出てくる「太郎君は傘をさした」「私も傘をさすことにした」「花子ちゃんはそうしなかった」これはいずれも(節)である。主語と動詞が存在しているためである。ここでは主語が三つ出てきており、それだけで十分わかりにくいが、実際は動詞部分がそれぞれ別になることが多いから、さらにわかりにくくなることか多い。

3. 修飾関係が不明瞭になる原因

かつて村上春樹の小説で「君のことがバターが解けるほど好きだ」という表現があった。これは小説なら素晴らしい比喩表現だが、残念ながら論説文においてはそうではない。論説文は社会のことを主なテーマとして書く必要がある上、その性質上誰が読んでも同じように解釈できるものでなければいけない。よって「〜ではないだろうか?」というように複数の解釈が許される表現は小論文においては厳しく咎められるべきである。

さて、「君のことがバターが解けるほど好きだ」といったような修飾表現で、しばしば修飾関係が不明瞭になる原因は、元を正せば一つの被修飾語句に対し、複数の修飾語句が存在するためである。そのために主述の関係があいまいになったり、修飾関係が曖昧になることは極めて多い。

こうした問題を解決するためには、被修飾語句・修飾語句のいずれも一単語になるように文を書くべきである。

4. まとめ

ここまででわかるように、読みやすい一文一文を書くためには三つの法則がある。

・ 接続詞を使うこと
・ 主語と対象語と動詞は一文に一つまでとすること
・ 被修飾語句・修飾語句のいずれも一単語になるようにすること

この三つを守るだけで、一文一文は相当読みやすくなるものだ。次は、一段落全体を通じて読みやすい文章を構成するためにはどうすればよいかについて書いていきたい。

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