- 議論の整理
過度な伐採による森林破壊は現在でも深刻な問題として世界中に存在するが、この問題に対し一方的な制度の押し付けによる解決を図ったとしても事態は改善するわけではない。何故なら、過度な森林伐採が行われる多くの地域では林業依存型の社会構造のもとに成立しており、林業に制限をかけることはコミュニティの破壊につながりかねないからである。従って、森林資源の管理を行うにあたっては、貧困問題などの社会学・経済学的な要素をも包含した分野横断的な視野が必要である。
- 問題発見
森林ガバナンスを持続的に行っていく為には、コミュニティ内における住民や企業などのステークホルダーの森林資源に対する認識を変えていかねばならない。つまり、その地域におけるコミュニティベースの社会的学習プロセスを定着させる必要があるのである。実際にこの社会的学習が定着した例として、インドネシアのランプン州にあるいくつかの村を挙げることができる。それでは、この社会的学習プロセスを他の地域にも適用することができるのだろうか。
- 論証
まずはランプン州でのコミュニティフォレストプログラムの過程で各ステークホルダーに生じた森林資源の価値認識変化を抽出し、一般化する必要がある。ウランダリと井上は西ランプン地区の3つの村を対象にアンケート調査を行い、リッカート尺度によって社会的学習の成果を具体的に把握しようと試みた。その結果、平等主義的な雰囲気や外部ファシリテーションなどの要因が学習定着に大きな影響を及ぼすことを明らかにしている。この研究を踏まえると、非常に近い村の間でも学習プロセスがもたらす成果が異なっていることが分かる為、その差異が生じる本質的な原因に焦点を当てたいと考えている。
- 結論
過度な森林伐採の果てに待ち受けるコモンズの悲劇を避ける為には、森林ガバナンスを実証的に分析した研究の蓄積が肝要である。本研究はこの社会的要請に応えることが期待できる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、環境社会学分野において主に東南アジア諸国における森林ガバナンスに関する数多くの研究を重ねてきた井上教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
Christine Wulandari and Makoto Inoue (2018). The Importance of Social Learning for the Development of Community Based Forest Management in Indonesia: The Case of Community Forestry in Lampung Province. Small-scale Forestry. 17(3), 361-376
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