- 議論の整理
社会学の実証研究領域として20世紀初頭に誕生した都市社会学は、比較的浅い歴史でありながらも深い学術的意義を持つ分野であり、「シカゴ・モノグラフ」に代表されるような欧米の諸都市の調査を端緒に世界中で発展してきた。日本においても東京大都市圏を調査フィールドとし、国勢調査データをもとに都市構造が形成されていく過程を理論的に分析した多くの論文が存在する。都市社会学にあっては、都市を単なる生活者の集まりとして捉える社会的な文脈からの分析が伝統的であったが、都市構造の空間的側面にも焦点を当て、その構造変容に意味を見出すという新しい潮流が注目を集めている。
- 問題発見
浅川教授らは、東京大都市圏の空間的な構造の変容を追うことでその社会構造と生活構造を可視化することを試みてきた。高度経済成長からバブル経済崩壊までの間に起こった東京の都市構造の変容を端的に表すと、それまでの各地域の特性の均質化と同心円状構造の形成であるといえる。先行研究では、その後の「失われた10年」においてもこの基本構造は変わらず、経済合理性による序列化が押し進められていったと報告している。それでは、2000年代における東京大都市圏の変容の方向性はどのようなものであろうか。
- 論証
先行研究では、「東京」という表現が提示する空間的範囲を特定することの必要性について言及している。今回の研究においても、まずは東京大都市圏の定義を再検討するところから始めたい。その後、2010年までの国勢調査のデータをもとに分析を行いたいと考えている。
- 結論
地方再生の気運が高まり始めてきた昨今において、2000年代初頭の東京の都市空間形成の方向性を把握することは今後の都市計画を立案する上で大いに役立つといえる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、都市社会学において東京圏の空間的変容を調査し続けてきた浅川教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
浅川達人(2006)「東京圏の構造変容―変化の方向とその論理―」『日本都市社会学会年報』 24, 57-71
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