- 議論の整理
格差は現代日本においても確かに存在し、その差は広がっている。かつてマルクスは近代社会の階級をブルジョアジーとプロレタリアートという二つに分けたが、現代の資本主義社会は両者の間に新中間階級と旧中間階級層を生み出した。この4階級図式は現代社会を明快に捉えることのできるモデルとして社会学分野の階層分析で用いられ、所属階級の違いは政治意識や生活満足度などの心理的要素に影響を与えるということが実証的に論じられてきた。
- 問題発見
しかしながら、非正規労働者などの従来の4階級図式に収めることが困難な人々が年々増加しており、この図式による階層分析では現代社会の実態を解明するのに不十分であるという問題が生じている。このような階級構造変容は格差拡大の構造的背景として特に重要であり、格差問題を対象にする限り、「アンダークラス」と呼ばれるこの最貧困層に視座を向ける必要がある。そこで、アンダークラスがいかにして形成されたのかを構造的に論じることはできないだろうか。
- 論証
橋本教授はアンダークラスが社会階級の主要な構成要素として一般化した現代を「新しい階級社会」と位置付けており、最貧困層の拡大に警鐘を鳴らしている。多くの研究例が明らかにしたように、アンダークラス層は自らの労働力の再生産すら難しく、一度転落してしまうと定着化しやすい。本研究では、この定着化までの過程を段階的に研究することを行いたい。
- 結論
格差問題は現代社会全体が抱える病理であり、あらゆる階層に悪影響を与える。この研究により、人々の問題意識が喚起されることを期待する。
- 結論の吟味
本研究を行うにあたって、社会構造を階層という観点から実証的に論じてきた橋本教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
橋本健二 (2018) 『アンダークラス 新たな下層階級の出現』筑摩書房
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