- 議論の整理
東京圏においては、1990年代以降の再都市化の進行によって地域から都心への人口移動が起こり、その傾向は現在でも続いていると考えることができる。日本の社会学領域では東京圏の空間的・社会的都市化プロセスについて数多くの研究が重ねられてきているが、一方で都心回帰によってそれぞれの特性が均質したと認識されている地域社会に関する研究例は、個々に対象とすべき事例の多さにも関わらず未だ不十分であると言える。
- 問題発見
社会集団では職業階層や教育的階層など様々な局面での階層制が生じる。社会的な現象を真に理解する際にはその背景に存在する各社会階層の持っている視座に立つ必要があり、階層研究は都市の構造変化を多角的に捉えることを可能にしてきた。都心から同心円状に同質化したとされる地域社会の変容プロセスを階層研究の視点から論じることはできないだろうか。
- 論証
武田教授は格差問題によりその内実が曖昧となった「中間層」という概念についての問い直しを試みている。具体的には日本とイギリスにおける「中間層」という概念の形成・変容過程を比較し、日本の地域社会における階層構造の形成を実証的に調査している。研究によれば、近代東京において都市空間と都市中間層の形成過程が密接に結びついていることが明らかとなった。従って、個々の地域社会の「中間層」に着目し、1990年代以降の挙動と社会構造形成との関連について実証的に調査を行いたい。
- 結論
本研究は、地域社会において依然として進行し続ける格差問題を解決するための一助となることが期待できる。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、人口社会学分野において主に地域社会を対象に長年にわたる質的調査を行い、優れた論文を数多く執筆している武田教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
武田尚子(2012)「近代東京における軍用地と都市空間−渋谷・代々木周辺の都市基盤の形成−」『武蔵大学総合研究所紀要』 21, 47-66
コメントを残す