早稲田大学 教育学部 外国学生入試 志望理由書 提出例(松木正恵ゼミ向け)

■議論の整理

書記言語と音声言語の違いは何だろうか。文字と声と呼んでもよいが、声を模した音声言語は小説の中で文字として現れたりもする。その際のベネフィットは何で、どんなコストがかかるかなど言語を突き詰めて考えて行くことは非常に有益だし、知られていない理屈を見定めて行く面白い作業だと思われる。

 

■問題発見

たとえば、音声言語には、その人の人となりを表現する重要な符牒になりうる。語尾が~~だ、~よね、~よ、~でございます、のいずれでも異なるキャラクターを創出することができるし、それを他者に簡単に伝えることができる。会話している人物どうしがどのような関係性にあるか、会話主体がどのような気持ちでその言葉を述べているなど、事実確認的な要素以外にも行為遂行的な内容を同時に表すことができる重要なベネフィットをもたらしている※1。しかし、そのコストは会話主体の言語圏によって異なる。どういうことか。

 

■論証

音声言語のベネフィットは、同じ共同体に属する、母語の集団を想定している。そこではそのように話すことが暗黙のコードとして働いているから了解の共通認識が成立する。一方で、母語ではない話者にとっては、この音声言語を使用することはコストが高い。事実確認的な言辞で彩ったほうが理解が早いからだ。

 

■結論

言語習得において、このベネフィットのコストを下げて行くことが本質的な言語理解につながることは言うまでもない。言語を理解するということは、書記言語のみを理解することではなく、本質的な文化共同体を理解することだからだ。とすれば、この音声言語を体系的に学習する方法を確立し、教育体系としてまとめていくことが言語習得の発展に貢献しうるだろう。

 

■結論の吟味

この展望はある意味で正しいが、困難であると言わざるを得ない。なぜなら母語の話者にとっても明確な基準があるわけではなく、また時代時代によってその言説体系もことなるからだ。言葉は変化し、伝承されていくというレベルの話以上に、この伝播は複雑で、現代に生きる我々が昔のベネフィットを理解するコストは高い。一つ一つ丁寧に掘り起こしていく作業を繰り返し、共通的な音声言語体系をある程度確立していくことをバランスよく構築してみたい。上記のような見取り図のもと研究してみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1松木正恵「質疑応答の概要とまとめ(『早稲田日本語研究』創刊20周年記念シンポジウム“正しい”日本語と現実の日本語――日本語研究の面白さ)」『早稲田日本語研究』20 2011

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