議論の整理・・・
日本史の研究をする上で、10世紀以降は正史がないために研究資料が不足していることが知られている。そこで、平安時代の和歌を歴史学の素材として用いることが提案されている。例えば平安時代の交通ルートを明らかにしたり、和歌を詠むことが政治的にどのように位置づけられているのかを解明したり、登場する地理や旅の記録から当時の旅の実態を明らかにしたりするのに和歌が有効であることがわかる。9世紀の前半まで詩は漢詩が主流だった。そこからどのように和歌に主流が移り変わっていったのか、和歌にそのヒントがある。898年に宇多上皇が行幸に出た際、大和国にて宇多上皇は和歌の名手である素性法師を呼び出して和歌を詠じさせた。近臣らも共に和歌を楽しみ、今後和歌の興成について思いを巡らせたという。そこに漢詩の名手である菅原道真も同席しており、漢詩から和歌への変化を感じ取っていたことがわかる。
問題発見・・・
和歌や、俳句を通して当時の文化や地理、風俗をより明らかにしていく研究を進めていきたい。
論証・・・
文学作品として日本史とは別の分野であつかわれている作品を史学の研究の裏付けに活用するというのは有意義な発案であると考える。同じことは、江戸時代以降の俳句にも当てはまるのではないだろうか。特に俳句については宮廷内の文化に限らず、平民も趣味として詠んでいる。当時の風習や宗教、地理や食生活など、和歌以上に幅広い範囲で活用することができるのではないだろうか。
結論・・・
貴学文化構想学部にてに精通した川尻秋生教授のもとで上述の研究を進めることを希望する。
川尻秋生「菅原道真と和歌」国際学術研究 会『国際的日本古代学の展開―交響する古代 II』2012 年 3 月 20 日、東京・明治大学
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