上智大学 文学部史学科 AO入試 井上茂子ゼミ向け

  • 議論の整理

19世紀ドイツは後発産業国家でありながら社会保険制度の形成を早期に経験したことを特徴とする。このような「社会国家」としての19世紀ドイツの福祉政策の根幹を為す理念は、下位共同体に対する国家の介入はあくまで自助を目的として行うという「補完性」の原理であったと言われている。しかしながら、この補完性原理のみでは福祉政策への積極的な取り組みを引き出すことはできない。それは国家の過干渉を回避するという論法によって福祉政策への消極的な態度の形成にも繋がりうるのである。

  • 問題発見

従来、このようなドイツの補完性原理は教皇による社会回勅の中ではじめて用いられたことから、カトリシズムの影響を受けて完成したものであると論じられている。しかし、坂井は著作のなかでこのような過度なカトリシズムへの還元を問題だと指摘している。彼は国家の社会問題への介入に対する積極的態度と消極的態度の二面性こそが補完性原理の概念的特性であるとし、このような二重の特性はカトリシズムのみに見られるものではないと述べている。このような複雑な構造を持った理念を基盤として、19世紀ドイツという福祉国家が成立した背景には何があったのだろうか。

  • 論証

実はこのような補完性原理の二重性は当時のドイツ国内においても既に顕在化していたのである。その背景となったのは、ドイツ初連邦における国政改革によって生じた解放危機である。不完全な工業化体制の中に投じられた解放農民は働き口を見つけることが出来ず窮乏状態に陥るが、この問題を自助によって克服するのか国家的援助によって解決するのかという視点が当時のドイツの社会情勢の中心だった。そこで、本論考ではドイツにおける福祉政策の原点とも言える解放危機をめぐる当時の言説を検討することで、近代ドイツ国家の成立を考察していきたい。

  • 結論

上記研究を行うにあたって、これまで貴学においてドイツ政策史をテーマに数多くの論文を執筆してきた井上教授のもとで学ぶことを強く希望する。

参考文献

坂井晃介 (2016) 「自由・安全・補完性-ドイツ社会国家の正当化論理をめぐる意味論的考察-」『相関社会科学』 26, 3-19

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