上智大学 総合人間科学部 心理学科 レポート等特定課題 2019年 小論文 解答例

■設問

「自分にとって心理学を学ぶことの意味」を述べなさい。

■答案

議論の整理→社会心理学からみる心理学を学ぶことの意義

心理学は人の行動を科学的なアプローチによって研究していく学問である。我々の行動の全ては実は意識的であれ無意識的であれ心の動きのもとで行われているとするのが心理学の根幹だ。ゆえに周囲で起こる行動や行為の全ては心理学の立場から説明することが可能となる。たとえば電車の中で見知らぬ人同士が些細なきっかけから口論になり周囲の人々が避けるようにして見て見ぬふりを決め込む光景を目にしたことはないだろうか。あるいは人通りの多い歓楽街などで起こる喧嘩行為も同様である。

問題発見

このように多くの人々が目撃している状況であっても誰一人として止めないことはよくメディアなどでは都会人の冷たさやモラルの低下などと揶揄される。

論証

しかし実はこれは心理学で見れば当然の行動として説明がつく。この行動は社会心理学における集団心理の一つであり、傍観者効果と呼ばれる心理である。すなわち同様の状況に置かれた人が多ければ多い程、人は事態の緊急性を低く感じ責任も分散されるように考え、かえって行動を起こすと責任が集中することを恐れるようになるという心理だ。

また心理学は人間関係においても密接な関わりを見せてくる。たとえば相手の周囲の評価が低いのにその恋人と別れない女性を見たことはないだろうか。それはハロー効果と呼ばれる社会心理学における有名な現象の一つだ。「あばたもえくぼ」という言葉に代表される通り、ある一つの良い側面を全体として拡大解釈してしまう人間心理を指している。この心理が働く背景には原始的な時代の即断の有用性が隠れている。悩まず判断を下すことで生存の可能性を挙げてきた原始の心理が遺伝的に残されていると考えられているのだ。

またこの心理は肯定的にも否定的にも働くため、現在において問題視されるメディアの偏向報道にも応用することができる。つまりある一定の偏った立場において報道を行う偏向報道を基盤とすることで、ある一つの側面からだけその事件を見た世間の人々がハロー効果によって後々の新情報が入ってきた際も初めの報道に捉われてしまうという現象だ。

このように心理学を使えば報道ですらも世評の操作をしていくことが容易となる危険性を孕んでいることが窺える。

結論

ではその中で心理学を学んでいく意味とは何か。それは無意識化において進んでいく社会や人間関係のそもそもの根幹を知れることにあるだろう。SNSが発達し様々な意見や情報が、否が応でも飛び込んでくる現代において心理学を学ぶことは、情報に取り囲まれた自身を守り確固とした自我を育てることに直結していく。

吟味

またしばしば様々なハラスメント問題や自殺問題などで深刻化している現代の人間関係を改めて根本から見直していくことで、必要のなかった衝突や問題を明らかにしていくことも可能になる。そこで行動と心を表裏一体として認識する心理学の立場から、今我々が生きている現代を詳細に解き明かし、社会の内外を問わず問題解決に働くことのできる学問こそが心理学であると私は考える。

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