上智大学 法学部 法律学科 編入学試験 2016年 小論文 解答例

■ 設問

次の文章を読んだ上で,問いに答えよ。

「フランスでは,国民はおのずからそこに『ある』ものではありえません。それは意図的に・・・(中略)・・・『つくらなければならない』ものです。国民を『つくる』ためには・・・(中略)・・・国民になるためのルールを示し,ひろく共有させることが必要です。・・・(中略)・・・フランス国民という集団は,このルールの上にはじめて成立するのです。この国民形成のルールのことを,フランスでは『共和国の価値』と呼びます。・・・(中略)・・・ですから,異質な文化や宗教に対して,彼らは基本的に肝要ではありません。存在を認められたければ,共和国の価値を受容し,フランス国民になるべきだ,・・・(中略)・・・そうすれば出自の如何を問わず対等にとりあつかわれるはずだ,と彼らはそう考えています。」
(小田中直樹『フランスの7つの謎』文春新書(2006年)33-35頁より)

社会の多元化が進む近年,上記の「国民形成」には疑問が表明されている。上記の文章でも「スカーフ事件(フランスの公立学校に,移民の女性とがイスラム教徒の象徴であるスカーフを着用して登校したところ,学校長から登校禁止処分を受けた事件)が扱われている。一方で,社会の多元化の放置は,国家としての統合や国民の平等を危うくする,との主張も表明される。この状況は現在の日本においても共通しているが,日本は如何なる方策を採るべきか,答えよ。(800字)

■ 答案構成

議論の整理→ 静かに進行する日本社会の多元化
問題発見→ 容認する多元化と非容認の多元化の境界
論証→ 「国民形成のルール」による,日本の地政学的リスクへの対抗策
解決策or結論→ 制御された多元化とその実装例
解決策or結論の吟味→ 先進他国での例証

■ 答案

議論の整理→ 静かに進行する日本社会の多元化

国際政治の視点でみれば,政策決定が国単位で成されている以上,国家が統治の最小単位である。いかに社会が多元化しようとも,この原則を変えてはならない。社会の多元化には,社会に良い効果をもたらすものもあれば悪い効果を及ぼすものもある。国家の統治を不安定にする社会の多元化は悪い効果の一例である。これが日本でも確実に進行している。

問題発見→ 容認する多元化と非容認の多元化の境界

それでは日本社会において,容認できる多元化と許容できない多元化の境界をどこに置くべきだろうか。

論証→ 「国民形成のルール」による,日本の地政学的リスクへの対抗策

現状,日本社会の多元化は,日本以外の他国にアイデンティティをもつ永住者や移住者によってもたらされている。日本は,領土拡大志向の強い大陸諸国に隣接するため,地政学的リスクが高い。それゆえ,国体維持や国政に影響を及ぼしうる多元化は容認しない。主権者たる日本国民が安心安全に暮らすことができる範囲でのみ多元化を認める。そして,多元化の許容範囲は「国民形成のルール」に明確に規定し,国の統治統合を乱す勢力は「国民形成のルール」を拠りどころに公権で排除する。たとえば,“ホテル経営に口出しする権利をホテル宿泊客に与える“に等しい「外国人参政権」など,断じて認めてはならない多元化の好例である。この点では,理念先行で導入した移民政策に失敗し社会的混乱が続くドイツや,移民による内乱状態に四苦八苦しているフランスを反面教師とすべきである。

解決策or結論→ 制御された多元化とその実装例

すなわち,日本社会の多元化を放置するのではなく,国家の統治を維持すべく制御された多元化をめざしたい。それには,国家基盤を磐石に保つために「国民形成のルール」を厳格に運用する必要がある。たとえば,公務員任用条件に国籍制限を明記する。さらに永住権を取得する手続きの厳格化,および日本国籍取得の際日本国に対して忠誠を誓う旨を宣誓させ,違反者からは国籍や権利を剥奪する,などである。

解決策or結論の吟味→ 先進他国での例証

これは国益に敏感な他の先進国に普遍的に認められる制約であることを強調しておきたい。

 

国際政治の視点でみれば,政策決定が国単位で成されている以上,国家が統治の最小単位である。いかに社会が多元化しようとも,この原則を変えてはならない。社会の多元化には,社会に良い効果をもたらすものもあれば悪い効果を及ぼすものもある。国家の統治を不安定にする社会の多元化は悪い効果の一例である。これが日本でも確実に進行している。
それでは日本社会において,容認できる多元化と許容できない多元化の境界をどこに置くべきだろうか。
現状,日本社会の多元化は,日本以外の他国にアイデンティティをもつ永住者や移住者によってもたらされている。日本は,領土拡大志向の強い大陸諸国に隣接するため,地政学的リスクが高い。それゆえ,国体維持や国政に影響を及ぼしうる多元化は容認しない。主権者たる日本国民が安心安全に暮らすことができる範囲でのみ多元化を認める。そして,多元化の許容範囲は「国民形成のルール」に明確に規定し,国の統治統合を乱す勢力は「国民形成のルール」を拠りどころに公権で排除する。たとえば,“ホテル経営に口出しする権利をホテル宿泊客に与える“に等しい「外国人参政権」など,断じて認めてはならない多元化の好例である。この点では,理念先行で導入した移民政策に失敗し社会的混乱が続くドイツや,移民による内乱状態に四苦八苦しているフランスを反面教師とすべきである。
すなわち,日本社会の多元化を放置するのではなく,国家の統治を維持すべく制御された多元化をめざしたい。それには,国家基盤を磐石に保つために「国民形成のルール」を厳格に運用する必要がある。たとえば,公務員任用条件に国籍制限を明記する。さらに永住権を取得する手続きの厳格化,および日本国籍取得の際日本国に対して忠誠を誓う旨を宣誓させ,違反者からは国籍や権利を剥奪する,などである。
これは国益に敏感な他の先進国に普遍的に認められる制約であることを強調しておきたい。(798字)

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