上智大学 文学部 新聞学科 海外就学経験者入試 2017年 小論文 解答例

  • 議論の整理:「分断」の定義と例示

分断とは、一つの社会や地域の中で複数の集団が対立している状態ないしそのような状態を生み出す働きのことである。例としては、南アフリカの中での白人と黒人のかつての対立、朝鮮半島における南北の分離、アメリカ国内での在来民と移民の緊張関係など、規模や対立のあり方について多種多様なものが挙げられる。実際、分断と統一を幾度も繰り返すことによって人間の歴史は作り上げられてきたのであり、人類の歴史の中で分断のなかった時代などこれまで一度もなかったと言える。その意味で、分断とは私たちにとって不可避なものであるとも言えよう。

 

  • 問題発見:「分断」の歴史をどう受け止めるか

ところで、分断を不可避なものとするこのような歴史的事実を前提にして、そこから分断を正当化する議論がときどき見受けられる。例えば、ある特定の人種を差別してきたことを、自分たちがそのような差別をこれまで行なってきたという事実から正当化しようといった類の議論である。このような論法はいたるところに登場し、とりわけ伝統を重んじる人々に支持されている。確かに、歴史という時間的重みには一定程度の説得力が伴うものだ。

しかし、このような歴史認識を前提にして、そこから、特定の分断を正当化することはできない。

 

  • 論証:過去の事実から未来のあるべき姿を導出することはできない

というのは、これまで私たちがある仕方で生きてきたという事実を前提にしても、そこから、これからもその生き方に従って生きていくべきだという結論を導くことはできないからである。例えば、これまで黒人を差別してきたという歴史を挙げたからといって、そこから、これからも私たちは黒人を差別して生きていくべきだという結論を導くことはできないだろう。このように、過去の事実から私たちの未来のあるべき姿を導くことには、少なくとも、論理的な飛躍があると言わざるを得ない。したがって、上記のような議論に安易にだまされてはいけない。

 

  • 結論:過去ではなく現在を見つめることの必要性

上記の議論の問題は論理的な飛躍という点だけではない。この議論においては、現在生きている人々についての言及がおろそかにされている。過去や歴史といったものの重視は、現在私たちとともに生きている多くの人々への眼差しをなきものにしてしまうおそれがあるのだ。

 

  • 結論の吟味:上記の議論は二重の誤りを犯しているということの反復・確認

以上の考察から言えることは、上記の議論は、論理的な誤りと現在への盲目から成るということである。分断を完全になくすことはできない。そして私たちの歴史とは常に分断によって成り立っている。だがそのような歴史的事実は分断を正当化することにはまったくならないのである。

 

分断とは、一つの社会や地域の中で複数の集団が対立している状態ないしそのような状態を生み出す働きのことである。例としては、南アフリカの中での白人と黒人のかつての対立、朝鮮半島における南北の分離、アメリカ国内での在来民と移民の緊張関係など、規模や対立のあり方について多種多様なものが挙げられる。実際、分断と統一を幾度も繰り返すことによって人間の歴史は作り上げられてきたのであり、人類の歴史の中で分断のなかった時代などこれまで一度もなかったと言える。その意味で、分断とは私たちにとって不可避なものであるとも言えよう。

ところで、分断を不可避なものとするこのような歴史的事実を前提にして、そこから分断を正当化する議論がときどき見受けられる。例えば、ある特定の人種を差別してきたことを、自分たちがそのような差別をこれまで行なってきたという事実から正当化しようといった類の議論である。このような論法はいたるところに登場し、とりわけ伝統を重んじる人々に支持されている。確かに、歴史という時間的重みには一定程度の説得力が伴うものだ。

しかし、このような歴史認識を前提にして、そこから、特定の分断を正当化することはできない。というのは、これまで私たちがある仕方で生きてきたという事実を前提にしても、そこから、これからもその生き方に従って生きていくべきだという結論を導くことはできないからである。例えば、これまで黒人を差別してきたという歴史を挙げたからといって、そこから、これからも私たちは黒人を差別して生きていくべきだという結論を導くことはできない。このように、過去の事実から私たちの未来のあるべき姿を導くことには、少なくとも論理的な飛躍があると言わざるを得ない。したがって、上記のような議論に安易にだまされてはいけない。

また、上記の議論の問題は論理的な飛躍という点だけではない。この議論においては、現在生きている人々についての言及がおろそかにされている。過去や歴史といったものの重視は、現在私たちとともに生きている多くの人々への眼差しをなきものにしてしまうおそれがあるのだ。

以上の考察から言えることは、上記の議論は、論理的な誤りと現在への盲目から成るということである。分断を完全になくすことはできない。そして私たちの歴史とは常に分断によって成り立っている。だがそのような歴史的事実は分断を正当化することにはまったくならないのである。(1010文字)

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