■ 議論の整理
近年、ブラジルにおいても多文化主義の時流にのり、人種間の格差是正に向けて、入学枠や採用枠における割り当ての特別措置(アファーマティブ・アクション)などの取り組みがなされている。ブラジルにおける人種主義の問題は、アメリカや南アフリカとは少し様相が異なる歴史を辿ってきた。
1940~50年代にかけてはブラジルにおいては人種問題はアメリカなどに比べて比較的温情的で、自由の獲得度も高く、差別はイベリア文化とアングロサクソン文化、カトリックと新教といった宗教的違い、社会的地位や階級に要因があるという主張がなされた※。
■ 問題発見
この「人種民主主義」と呼ばれる主張は60~70年代以降は否定されてきたが、差別と不平等な処遇の慣行は「混血の国」という看板のもとで、現在でもなお機能し続けている。
矢澤教授によると、ブラジル黒人運動は20世紀前半には本格的に姿を現し、同時に歴史的に見ても全盛期であった※。このこと自体が、ブラジルの人種主義の見えにくさや闘いにくさを象徴しているようにも思う。では、1888年の奴隷貿易廃止以後、ヨーロッパなどから新たな移民労働者が増え、人種的・文化的・宗教的な差異が複雑化していく中で、人種主義の言説はどのように創られ、機能してきたのだろうか。また、それに対して黒人運動や人種差別への抵抗はどのように展開されてきたのだろうか。
■ 論証
白人や国家によるパターナリズムが横行する中、解放運動は必ずしもデモや抗議と言ったわかりやすい抵抗の形をとるとは限らない。そこで、ブラジルの歴史における民族の異種混淆の状況を整理するとともに、大衆文化の中に見られる人種主義とそれに対する抵抗に注目してみたい。
■ 結論
そのために、各年代の大衆雑誌をはじめとしたメディアにおいて、人種問題がどのように扱われてきたのかを、調査・分析してみたい。
■ 結論の吟味
上記の研究を遂行するにあたり、語学力向上と国際関係論的分析のための知識や方法論獲得のために、貴学のポルトガル語学科に進学し、矢澤達宏教授のゼミで学ぶことを強く希望する。
※矢澤達宏(2005) 黎明期ブラジル黒人運動に関する予備的考察 :その展開と内的動態を中心に 敬愛大学国際研究16:1₋38.
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