■議論の整理・・・
海上保険とは、海外に貨物を輸送する過程で事故に遭ったとき、その損害の補償を受けられる制度である。「海上」とあるので海での事故に限定されると思われがちである。しかし実際は、陸上の事故が補償の対象となるケースもある。輸送中に事故に巻き込まれ、貨物が破損した場合、会社が被る被害は相当額となる。そのため海上保険に入ることは必須であるが、補償される領域の確定は複雑で、さらに現在に固有のリスク対応が十分になされているとは限らない。
■問題発見・・・
現代の日本では、大企業だけではなく中小企業も、国内市場の縮小を見越して海外貿易を加速させている。そのため、海上保険の補償状況を整理し、グローバル化に合わせた制度の再設計が必要なのではないか。
■論証・・・
論文※1によると、世界がグローバル化するなか、損害が高額化する、損害が発生する地域が一部に集中するなど、海上保険の対象リスクに変化が生じている。また、国際貿易の仕組み自体がグローバル化しているため、海上保険もそれに対応する必要性に迫られている。このような論文※1の指摘を踏まえると、国際貿易のノウハウを備えた大企業は、海上保険に内在する複雑さや曖昧さに、ある程度の対応は可能であろう。しかし、中小企業の場合、リスクの実態が分からず、最適なプランを選ぶことができない、あるいは、最適なプランが存在しない可能性がある。
■結論・・・
私は、海上保険の対象リスクの変容を調査し、現在の日本の国際貿易推進における課題を明らかにする。そのうえで、国際貿易推進の鍵となる中小企業の実態調査を通じて、海上保険の制度を最適化する方法を導き出す。
■結論の吟味・・・
そこで私は、保険会社で長らく実務に携わり、その経験をもとに海上保険制度の研究を進めている中出哲教授のゼミに参加することを希望する。
論文※1中出哲(2012)「わが国の海上保険の現状の課題と進むべき方向性」『海事交通研究』61号
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