■議論の整理・・・
M&Aは、企業の事業を拡大する、あるいは効率化するなど、前向きな理由によりなされることがある。それと同時に、ターゲットとする会社の株式を市場で買い集めて取締会の同意を得ずに経営権を獲得する、敵対的買収も存在する。企業は、敵対的買収に向けた動きを察知したら、その防衛策を講じる必要がある。そのひとつが自己株式の消却である。市場に出回っている株式を減らし、株価を上昇させることで、敵対的買収を防げられるからである。
■問題発見・・・
自己株式の消却を積極的に行う会社の目的は、敵対的買収に対する防衛だけなのだろうか。株価を上昇させることで、経営状態を改善させるメリットがあるのではないか。そのメカニズムが解明できれば、経営戦略のひとつとして理論化できるのではないか。
■論証・・・
論文※1によると、自社株買いについてはデータや研究の蓄積があるものの、その償却については、公表データがほとんどない。そのうえで、自社株買いとその消却の関連性を定量的に把握する必要性を指摘している。現在、公表データが少ないものの、大企業を中心に自己株式を積極的に償却する動きが活発化している。自己株式を消却することは、コスト的に意味がないとする意見もある。しかし、それでも自社株消却を行うケースが増加しているのは、株主対策の一環として一定の効果があることが理由と考える。
■結論・・・
そこで私は、実際に自社株消却を行った企業の株価の変動や、その後の成長率の調査を試みる。定量的な把握を通じて、どのような意図により自社株の消却を実施したのか、それが株式市場にどのような影響を与えたのか、そのメカニズムの解明を試みる。
■結論の吟味・・・
谷川寧彦教授は、自社株購入・消却を含め、株式市場のメカニズムについて、さまざまな視点から研究をしている。そこで私は、自分の関心を深めるため、谷川ゼミに所属することを希望する。
論文※1谷川寧彦(2012)「自社株取得とその消却」『早稲田商学』431号(早稲田大学)
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