慶應義塾大学 法学部 FIT入試 A方式 2013年 論述問題 解答例

■設問

模擬講義の概要
講義のテーマ:これからの株主総会
講義の概要:
私たちと株式会社、私たちと法
株式会社と株主の関係
株主と取締役の関係
株主総会の仕組みと機能
株主総会の現状
株主総会の活性化策
これからの株主総会の在り方
*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。

論述形式試験の概要
論述の設問内容: 
授業で述べられたことをもとにして、法はどのような理由で株主総会という制度を設けているのかを説明し、今後の株主総会はどうあるべきかについて、あなたの考えを書きなさい。 

■答案構成

5STEPで書く

議論の整理→株主総会がある理由

問題発見→株主総会の形骸化

論証→複雑な要因が絡んでいる

結論→形骸化を解決するためのルール制定

結論の吟味→施策の妥当性

■答案

議論の整理→株主総会がある理由

株式会社とは企業が株式を発行して投資家から資金を集め、その資金を元に企業経営を行うという企業の形である。株式を購入した投資家は株主と呼ばれ、出資額に応じて配当による利益を得ることができる。また、株主は経営参加権という株式会社の経営に関与することができる権利を得る。具体的には、経営の重要な決定を決める株主総会において、株式の保有数に応じて発言権や決定権を得ることができる。この株主総会は大きく2種類に分けられる。定期的に行われる決算承認や役員の選任決議を行う定時株主総会と、必要なときにその都度行われる合併や会社分割、株式交換などの重大な決定事項の発生する際に臨時株主総会に分けられる。実際の企業経営は、株主に経営を任された取締役が臨むことになる。株主総会では、取締役などの経営側は勝手な行動をしないように調整する役割も持つ。

問題発見→株主総会の形骸化

株主総会の問題として、形骸化が進み、経営陣と株主とのコミュニケーション不足が起きていることが挙げられる。上記で説明したとおり、株式会社とは株主である投資家のお金によって経営をしているため、株主の意向を経営に反映させる必要がある。したがって、株主と取締役のコミュニケーション不足は好ましくない経営状態である。しかし、現在の日本において株主総会は形骸化している。

論証→複雑な要因が絡んでいる

上記のような形骸化には様々な原因が考えられる。経営陣側の問題と株主側の問題にわけて、3つずつ原因を挙げる。経営陣側の1つ目の原因は、企業が株主の意見をする時間が短くなるように株主総会を短時間に設定していることである。株主の中には、自分たちの権利行使を乱用する総会屋と呼ばれる人たちがおり、そのような人の対策をするために短い時間を設定している。2つ目の原因は、大株主の意向は予め把握して根回ししていることである。経営に大きな影響を与えることのできる大株主には予めニーズを聞き出しておき、株主総会に時に時間を割かなくていいように準備をしている。3つ目の原因は、メインバンクとの密接な関係を築いていることである。多くの企業はメインバンクを持っており、その銀行と相互に株式を持ち合い、経営の内容を把握しているため、上手く資金の貸与が行われる。もし、経営が悪化した場合、メインバンクが役員を派遣して再建の支援を行う。このようなメインバンクとの密接な関係により、メインバンク以外への説明が疎かになってしまう。株主側の1つ目の原因は、株主が株主総会に参加するコストが大きいことである。株主の中には多くの企業の株式を持っている場合が多く、株主総会の都度参加するのは手間がかかる。また、総会が平日に行われる場合は自分の仕事を休まなければならない。2つ目の原因は、企業の発行株式数が多くなれば多くなるほど、株主の議決権が相対的に弱くなることである。特に株式をそれほど持っていない小株主は、議決権が弱くなってしまうため総会に参加する意欲が削がれることとなる。3つ目の原因は、投資家である株主にとって企業の長期的な経営がどうなろうと関係ないことである。株式譲渡や売買が自由な公開会社では、売買益などを目的に株式を購入する投資株主が現れる。そのような株主は、株式による利益さえ得られれば良いため、企業の経営の良し悪しには関心がない。したがって、株主総会に参加するモチベーションはない。

結論→形骸化を解決するためのルール制定

以上のような背景を考慮した上で、株主総会のあるべき姿はIT技術を用いることである。株主総会が形骸化した理由は様々であるが、経営陣側にとっても株主側にとっても株主総会が参加するに見合わないコストが発生するという点は共通している。したがって、この参加するコストを削減することが株主総会の活性化につながる。例えば、株主総会の招集通知や議決権行使も電子化することでスムーズに行うことができる。また、株主総会の参加も、現地に直接赴くのではなく、テレビ会議システムなどを用いた参加を許可することで、参加へのハードルが下がる。また、株主総会に電子投票システムを組み込むことによって、参加する意欲が低い小株主にもモチベーションを与えることができる。

結論の吟味→施策の妥当性

このように株主総会の活性化を行うことで、企業側は2つのデメリットを被る。1つ目は、株主総会にかかるコストが増加することである。2つ目は、経営判断に口出しされる可能性が高まることである。しかし、これらは問題とはならない。なぜなら本来の株式会社というのは株式を持つ株主の意向に従って経営を行うものだからだ。

株式会社とは企業が株式を発行して投資家から資金を集め、その資金を元に企業経営を行うという企業の形である。株式を購入した投資家は株主と呼ばれ、出資額に応じて配当による利益を得ることができる。また、株主は経営参加権という株式会社の経営に関与することができる権利を得る。具体的には、経営の重要な決定を決める株主総会において、株式の保有数に応じて発言権や決定権を得ることができる。この株主総会は大きく2種類に分けられる。定期的に行われる決算承認や役員の選任決議を行う定時株主総会と、必要なときにその都度行われる合併や会社分割、株式交換などの重大な決定事項の発生する際に臨時株主総会に分けられる。実際の企業経営は、株主に経営を任された取締役が臨むことになる。株主総会では、取締役などの経営側は勝手な行動をしないように調整する役割も持つ。
株主総会の問題として、形骸化が進み、経営陣と株主とのコミュニケーション不足が起きていることが挙げられる。上記で説明したとおり、株式会社とは株主である投資家のお金によって経営をしているため、株主の意向を経営に反映させる必要がある。したがって、株主と取締役のコミュニケーション不足は好ましくない経営状態である。しかし、現在の日本において株主総会は形骸化している。
上記のような形骸化には様々な原因が考えられる。経営陣側の問題と株主側の問題にわけて、3つずつ原因を挙げる。経営陣側の1つ目の原因は、企業が株主の意見をする時間が短くなるように株主総会を短時間に設定していることである。株主の中には、自分たちの権利行使を乱用する総会屋と呼ばれる人たちがおり、そのような人の対策をするために短い時間を設定している。2つ目の原因は、大株主の意向は予め把握して根回ししていることである。経営に大きな影響を与えることのできる大株主には予めニーズを聞き出しておき、株主総会に時に時間を割かなくていいように準備をしている。3つ目の原因は、メインバンクとの密接な関係を築いていることである。多くの企業はメインバンクを持っており、その銀行と相互に株式を持ち合い、経営の内容を把握しているため、上手く資金の貸与が行われる。もし、経営が悪化した場合、メインバンクが役員を派遣して再建の支援を行う。このようなメインバンクとの密接な関係により、メインバンク以外への説明が疎かになってしまう。株主側の1つ目の原因は、株主が株主総会に参加するコストが大きいことである。株主の中には多くの企業の株式を持っている場合が多く、株主総会の都度参加するのは手間がかかる。また、総会が平日に行われる場合は自分の仕事を休まなければならない。2つ目の原因は、企業の発行株式数が多くなれば多くなるほど、株主の議決権が相対的に弱くなることである。特に株式をそれほど持っていない小株主は、議決権が弱くなってしまうため総会に参加する意欲が削がれることとなる。3つ目の原因は、投資家である株主にとって企業の長期的な経営がどうなろうと関係ないことである。株式譲渡や売買が自由な公開会社では、売買益などを目的に株式を購入する投資株主が現れる。そのような株主は、株式による利益さえ得られれば良いため、企業の経営の良し悪しには関心がない。したがって、株主総会に参加するモチベーションはない。
以上のような背景を考慮した上で、株主総会のあるべき姿はIT技術を用いることである。株主総会が形骸化した理由は様々であるが、経営陣側にとっても株主側にとっても株主総会が参加するに見合わないコストが発生するという点は共通している。したがって、この参加するコストを削減することが株主総会の活性化につながる。例えば、株主総会の招集通知や議決権行使も電子化することでスムーズに行うことができる。また、株主総会の参加も、現地に直接赴くのではなく、テレビ会議システムなどを用いた参加を許可することで、参加へのハードルが下がる。また、株主総会に電子投票システムを組み込むことによって、参加する意欲が低い小株主にもモチベーションを与えることができる。
このように株主総会の活性化を行うことで、企業側は2つのデメリットを被る。1つ目は、株主総会にかかるコストが増加することである。2つ目は、経営判断に口出しされる可能性が高まることである。しかし、これらは問題とはならない。なぜなら本来の株式会社というのは株式を持つ株主の意向に従って経営を行うものだからだ。

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