東京薬科大学 薬学部 総合型選抜AO 2023年度 小論文過去問解説(医療における安全と安心)
問1【解説】
設問文
テーマ:医療における「安全」と「安心」の違いを踏まえ、あなたが薬学生として身に付けるべきこと、またそれを将来どのように活かしていこうと思っているか述べてください。 黒のボールペン(消せるボールペンは不可)を使用し、本人の自筆、横書きで1,200字程度にまとめてください。
課題文・資料の要点
課題は、医療における「安全」と「安心」の違いを明確にしたうえで、薬学生として学ぶべきことと将来の活用を述べるものである。安全は科学的・制度的に危険を減らすこと、安心は患者が納得して治療を受けられる心理的状態として整理できる。
設問条件の判定
- 制限字数: 1,200字程度
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 概念比較、学修計画、将来像を結びつける志望型小論文である。
解答プロセス
- STEP1 要件確認: 安全は客観的なリスク管理、安心は患者の理解と信頼に関わるものとして整理する。
- STEP2 問題設定: 安全な医療であっても、説明不足なら患者は安心できない。
- STEP3 論証: 医療は科学的正確さだけでなく、患者の不安、生活、価値観の上に成り立つ。
- STEP4 解決策: 薬学生として、薬学知識、情報判断、説明力、倫理観を身に付ける。
- STEP5 吟味: 安心だけを重視して根拠を軽視せず、安全と安心を橋渡しする薬剤師を目指す。
問1【解答】
医療における「安全」とは、科学的根拠に基づいて危険をできる限り減らすことである。薬でいえば、用量、相互作用、副作用、禁忌、保管方法などを確認し、患者に害が及ばないようにすることである。一方、「安心」とは、患者が治療の意味を理解し、不安を抱えたまま放置されず、納得して医療を受けられる状態である。安全は客観的な仕組みに近く、安心は患者の受け止め方に深く関わる。医療者が安全だと判断しても、患者が理由を知らなければ安心にはつながらない。
両者は同じではない。どれほど安全性が確認された薬でも、患者が副作用を恐れ、説明を理解できなければ安心して服用できない。逆に、優しい言葉で安心させても、薬学的に誤った説明であれば安全は守れない。医療では、安全を根拠として確保し、その根拠を患者に届く言葉で伝えることが必要である。
薬学生としてまず身に付けるべきことは、薬学の基礎知識である。薬理学、薬物動態学、病態、製剤、衛生、法規を学び、薬が体内でどのように働き、どのような危険を持つかを理解しなければならない。患者の安心を支える説明も、正確な知識があって初めて成り立つ。知識が曖昧なまま患者に寄り添おうとすれば、善意であっても誤った安心を与えてしまう。
次に必要なのは、情報を批判的に読む力である。医療情報は専門論文、添付文書、ガイドライン、インターネット、SNSなど多くの形で存在する。将来、患者が誤った情報を信じて不安になっている場面に出会うこともある。その時、薬剤師は情報を否定するだけでなく、何が確かで何が不確かなのかを整理して伝える必要がある。新しい薬やワクチンに関する不安にも、感情を受け止めたうえで根拠を示す姿勢が求められる。
さらに、コミュニケーション能力を磨きたい。患者は副作用の名前を知りたいだけではなく、自分の生活で何に気をつければよいかを知りたい。高齢者、子ども、慢性疾患の患者、在宅療養の患者では、必要な説明の仕方も異なる。相手の表情や言葉から不安をくみ取り、理解度に合わせて説明する力が求められる。
将来は、地域医療の中で安全と安心を橋渡しする薬剤師になりたい。処方監査や服薬指導を通じて薬物療法の安全を守るだけでなく、患者が疑問を言いやすい雰囲気をつくりたい。医師や看護師とも連携し、患者の生活状況を踏まえた提案ができる薬剤師を目指す。たとえば飲み忘れが続く患者には、叱るのではなく、服用回数や生活リズムを確認し、実行できる方法を一緒に考えたい。安全を根拠で支え、安心を対話で支えることが、私が薬学生として学び、将来活かしたい力である。
字数カウント: 1071字



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