東京都立大学 前期日程 2025年 小論文過去問解説(壊れたものと機能社会)
問1【解説】
設問文
問三 現代を生きる人間は、壊れたものや機能を果たさないものとどのように向き合っていくべきだろうか。生産や機能を求める社会への筆者の眼差しを踏まえながら、あなたの考えを800字以内で述べなさい。
設問条件の判定
- 制限字数: 問三800字以内
- 意見論述の要求: あり
- 選択テンプレート: 5STEPs法
- 判定根拠: 壊れたものや機能を果たさないものへの向き合い方を、筆者の眼差しを踏まえて論じる800字以内の論述であるため。
解答プロセス
- 議論の整理: 課題文は、完璧に機能するものより、壊れたものや修理を要するものが共通の使用や喜悦を開くと見る。
- 問題発見: 現代社会は生産性、効率、スマートさを求め、機能から外れるものを排除しがちである。
- 論証: 言い分方式で、効率社会の利点と、壊れたものが人間関係を開く意義を対比する。
- 結論: 壊れたものを廃棄対象だけでなく、修理・共有・再解釈の契機として扱うべきだと述べる。
- 吟味: 危険や不衛生を放置するのではなく、機能一辺倒を相対化する態度が必要である。
問1【解答】
現代を生きる人間は、壊れたものや機能を果たさないものを、ただちに不要なものとして排除するのではなく、社会のあり方を問い直す契機として受け止めるべきである。課題文の筆者は、完璧に機能するものは一見美しいが、他者の手や助けを必要としないため、「共通の使用」が生まれにくいと見る。逆に、修理や援助を必要とするものは、人と人との関係を開く。
問題は、私たちの社会が効率や生産性を基準にしすぎている点にある。速く動く交通、正確な機械、迷惑をかけない身体は評価されるが、壊れた道具、遅い動き、予定通りに働かない身体は、邪魔なものと見なされやすい。しかし、その排除は、人間もまた弱り、壊れ、助けを必要とする存在であることを忘れさせる。
たしかに、壊れたものをすべて残せばよいわけではない。危険な設備や不衛生な環境は直す必要がある。だが、直すことは、元通りの効率へ戻すことだけを意味しない。修理して使い続ける、別の用途に開く、他者と共同で扱うことによって、ものは新しい関係を生む。
たとえば、古い建物を壊して新築するだけでなく、地域の記憶を残しながら改修することがある。障害のある人のゆっくりした移動に合わせて街の速度を変えることも、機能社会をほぐす実践である。そこでは、壊れや不便が単なる欠陥ではなく、社会を共有可能にする入口になる。
結論として、壊れたものに向き合うとは、効率の物差しだけで世界を測らないことだ。壊れたものを通じて、修理し、待ち、助け合う関係を作ることが、機能を求めすぎる社会に必要な態度である。
字数カウント: 665字



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